モーリス・デイ&ザ・タイムが魅せた世代と時代を超えるショウマン・シップ 来日ツアー初日公演をレポート 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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モーリス・デイ&ザ・タイムが魅せた世代と時代を超えるショウマン・シップ 来日ツアー初日公演をレポート

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モーリス・デイ&ザ・タイムが魅せた世代と時代を超えるショウマン・シップ 来日ツアー初日公演をレポート

モーリス・デイ&ザ・タイムが魅せた世代と時代を超えるショウマン・シップ 来日ツアー初日公演をレポート


 2019年6月21日、ビルボードライブ東京でモーリス・デイ&ザ・タイムのジャパン・ツアーがスタートした。
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 スタイル(様式)のあるバンド、スタイルを生み出したバンドは、やはり強い。“それ”をやれば客は喜ぶ。今でも喜ぶ。未だにやるから喜ぶ。所謂「お約束」と呼ばれるやつ。モーリス・デイの場合、“それ”は例えば鏡を見ながらコームで髪を整えること。立てた小指を腕時計に添えて時間を確認する仕草をすること。白いハンカチで汗を拭くこと。ここぞというところで、それをやる。何度もやる。

 ステップだってそんなに種類があるわけじゃない。お腹のあたりに手を当てたまま足を左にピョコン、右にピョコン。で、ここで一回りして、反対側にも一回り。その程度のことだが、それをミラー・ガイ(=鏡男。即ち鏡をモーリスに見せる男)と揃ってやったり、あるいはギタリストやベーシストと揃ってやったりするから、なんとも絵になる。華がある。

 モーリス・デイ。もともとは真面目にドラムを叩いて演奏で勝負せんとしていた若者だったそうだが、プリンスと出会ってバンドの歌うたいになり、やがてピンプな伊達男たるキャラを獲得したことで今がある。それだけのオレじゃないと抵抗して別の面を見せようとした時期もあるにはあったが、時間は流れ、もう何年もそのキャラを柱としたショウを生き生きと見せ続けている。ショウマンシップとはまさしくこのこと。そんなモーリスの声は実によく出ていたし、その艶も増していた。61にして衰えまったくなし。ギラついたジャケットも時計も今だからこそ最高に様になっていた。

 ずいぶん久しぶり(28年ぶりだそうな!)の来日公演。現メンバーはモーリス・デイのほかにジェリービーン・ジョンソン(ドラムス)、モンティ・モイア(キーボード)、リッキー・スミス(ベース)、テレル・ラフィン(ギター)、そして引き立て役の2代目ミラー・ガイとなるトーマス・オースティン。ジャム&ルイスはいないし、ジェシー・ジョンソンもいないし(7月に来るけど)、ジェローム・ベントンも来ないということにブツブツ言ってた人もいたようだが、「いない」ことを嘆くよりも「いる」ことの喜びを思うべきで、実際オリジナルメンバーのジェリービーンとモンティが素晴らしいプレイを見せていた。ジェリービーンは曲テンポの変え方が柔軟で自然。モーリスのひとつ上だが若々しくてかっこいい(彼の黒いハットにはプリンスのあのマークが!)。モンティはベーシストのリッキーが大柄なだけに余計小さく見えたが、パンツのポケットに片手つっこんでクールにプレイするのが粋だった。ギタリストとベーシストは安定したプレイを見せつつ、ときに前に出て煽ったりも。そして最年少であろうトーマス・オースティンは鏡持ちの役割以外にも細やかによく動き、客を煽りもすれば小道具を持ったり指定の場所に置いたりと気配りもバッチリだった(モーリスが落したコームをあとで拾って自身のジャケットのポケットにスッと仕舞ったあたりの“できるやつ”っぷりもなかのもの)。

 その総体としてのミネアポリス・ファンクに重厚さなどはないが、いい意味で安っぽいシンセの鳴りにジェリービーンとリッキーのしっかりしたリズムが乗ってテレルのカッティングが加わると、カラダが動かずにはいられなくなる。ほかの場所で生まれたファンクとは異なるファンク感とグルーヴが、たまらない。尚、その元の形を生み出したのはプリンスであって、ザ・タイムはプリンスのおかげで(映画『パープル・レイン』によって)成功したバンドだが、プリンスのおかげで早くに分裂したバンドでもある。よってモーリスのプリンスに対する気持ちはずっと複雑なものがあったはずだが、プリンスの死後、それはどういうものになっているのか。公演は続くので詳しくは書かないが、それが明確に示される場面がある。楽しきライブのなかに挿みこまれる涙の要素。グッとこないではいられなかったが、それも含めてのエンターテイメントとしてよくできているなと感心もさせられた。

 このあとの公演を楽しみにしている人たちのためにセットリストは書かないでおくが、とりあえずあなたが聴きたい曲はほぼ全部やってくれると思っていていい。つまりある時期に偏ったりしていない、非常にバランスのとれた構成で、しかも“この曲からあの曲に続けたかぁ”という繋ぎの巧さにやられもする。つまり誰もが満足のいく構成になっている。

 “あの頃、好きだった人たち”は当然みんな観に行くだろうが、“あの頃”を知らない若い世代にもぜひ観に行っていただきたいし、これは初めて観ても楽しめるエンタテインメント性に満ちたショウだと断言したい。そして、始まったら当然立ち上がり、モーリスの真似して手をヒラヒラさせたりしながら踊って観てほしい。みんながそれをやったら何倍も楽しくなるはずだから。

Text:内本順一


◎公演概要
【モーリス・デイ&ザ・タイム】

ビルボードライブ東京
2019年6月22日(土)~6月23日(日)
1st Open 15:30 / Start 16:30
2nd Open 18:30 / Start 19:30

ビルボードライブ大阪
2019年6月25日(火)
1st Open 17:30 / Start 18:30
2nd Open 20:30 / Start 21:30


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