ミケランジェロ展イメージソング作詞の江國香織と作曲の園田涼、『ダヴィデ=アポロ』と初対面
ミケランジェロ展イメージソング作詞の江國香織と作曲の園田涼、『ダヴィデ=アポロ』と初対面

 2018年6月19日より東京・国立西洋美術館で開催中の【ミケランジェロと理想の身体】に、ピアニストの園田涼と直木賞作家の江國香織が訪れた。

 静かで厳かな美術館独特の雰囲気の中、ミケランジェロの傑作『ダヴィデ=アポロ』と初対面した園田は「未完ものが時を越えて来るってすごいですね。エネルギーを感じる」と思わず息をのんだ。江國は「滑らかさの奥の荒々しさが大好きです。ずっと眺めていたい」と感嘆。アーティスト、作家ならではの感受性で存分に作品を堪能した。

 鑑賞後は園田が作曲、江國が作詞を担当した、同展の目玉の一つである『ダヴィデ=アポロ』のイメージソング「MICHELANGELO」の話に。作詞に関して、江國が「作詞をすると約束したのが酒場だったせいもあり、話の内容の半分くらいしか覚えていなかったのですが(笑)。園田さんと一緒に音楽を作れるということだけは覚えていて、送って戴いたデモテープを聞いたときは壮大な曲だったので、怯えたというか、びっくりしました。私の作詞で大丈夫かなと…。詩でも小説でも私が書くものは、小さく小さく、小さいところを見る作品が多いので、ちょっとびっくりしました。でも、何度も聞いていたら、今回ミケランジェロというテーマがあったので、曲の壮大さ、雄大さが時間の流れというように感じられてきたんですね。そう思ったら物語を雄大にする必要はなくて、ささやかな者達の長い時間の歌にしたいなと思い、そこから先は不安がなくなりました」と語った。

 一方、園田は作曲に関して「楽器で映えるメロディーと歌って映えるメロディーって、実は全然違うので、今回同じ曲がインスト・バージョン、歌唱バージョンとなるということで、両方とも音楽として良いものにするということがなかなか難しいなということがありましたね。僕は曲を作るときあまり書き直しってしないんですが、今回は次の展開をどうしようかってなって、自分なりの正解を見つけていくのがすごく難しかったですね。でも今回は誰が聞いてもヨーロッパ的な曲がかけたんじゃないかなと思っています。ヨーロッパって連綿と続く成長して破壊してっていう歴史があって、そういう繋がりみたいなものが描けたんじゃないかなと思います」と語り、江國は「カエルという歌詞から始まる曲なのですが、あらゆる生き物にある、命の連なりの歌にしたかったんです。時間と空間を超えて届いてくるものを小さいところから紐解きたかった。でも未完のものが時を超えて見られるってちょっと嫌かな(笑)」と語った。

 最後に再度【ミケランジェロと理想の身体】展の話になり、江國は「ゆっくり見られて贅沢だった。今回彫刻をじっくりと見てびっくりしました。ルネサンス期の作品を見ると個性をあまり出さない職人の作品なんだなと。後世になればなるほど既存のルールを破って自分の印を残したいと思ったりするけれど、黙々と仕事をしていたんだろうなって。今回ミケランジェロ以外の作品もゆっくり見て回れて、そのストイックさというかとても面白かったですね。様式美に則って人間的な個性を抑えているのに、ミケランジェロはミケランジェロとわかる。職人として際立ったものを持っている凄さですね」と語った。

 園田も「僕はずっとポップスフィールドでやってきたのですが、最近クラシックの演奏家さんたちとよく話すようになり、彼らがこだわってるものが僕たちとは根本的に違ってることに気付かされました。彼らは楽器の音色にとてもこだわっている。同じピアノを弾いているのに僕では出せない音色がある。アコースティック楽器が電子楽器とは全く違うんだなということに改めて驚かされました。そんな出会いを活かしたくてクラシックの演奏家の方達とソノダオーケストラを作りました。これからがとても楽しみです。また今回『MICHELANGELO』という曲では、江國香織さん、中川晃教との素晴らしい出会いがあり、とても魅力的な作品になったと思います」と語った。園田がリーダーでピアノを務めるソノダオーケストラのメジャー・デビュー・アルバム『MICHELANGELO』には、「MICHELANGELO」インストVer.とボーカルVer.の2曲が収録されおり、ボーカルVer.には、ゲストボーカルとして中川晃教が参加している。

◎リリース情報
アルバム『MICHELANGELO』
2018/6/20 RELEASE
HUCD-10256 2,000円(tax in.)

『ダヴィデ=アポロ』(部分)ミケランジェロ・ブオナローティ 1530年頃 フィレンツェ、バルジェッロ国立美術館蔵 Firenze, Museo Nazionale del Bargello / On concession of the Ministry of cultural heritage and tourism activities.