玉置浩二、ライブでの最新のクリエイションを体感するビルボードライブ・ツアーが終了 新たな編成で挑んだステージをレポート
玉置浩二、ライブでの最新のクリエイションを体感するビルボードライブ・ツアーが終了 新たな編成で挑んだステージをレポート

 2018年1月末から2月にかけて玉置浩二の東阪ビルボードライブ・ツアーが開催された。本稿ではその2月11日、ビルボードライブ東京公演のファースト・ステージの模様を伝える。
玉置浩二 ライブ写真(全8枚)

 玉置にとって約1年半ぶりとなった今回のビルボードライブ東京公演。前回はDJ 1,2との2人編成だったが、今回は川村ケン(キーボード)、ホセコロン(パーカッション)、ゴンドウトモヒコ(ユーフォニアム/フリューゲルホルン)、武嶋聡(サックス/フルート)も加わった6人編成。やや変則的な楽器構成からも分かる通り、既にリスナーにはお馴染みの名曲も、そのアレンジがガラリと変わっていたりする。現在の玉置にとって、クリエイションの本質がライブの“現場”にあることが、ありありと伝わってくるステージでもあった。

 定刻を過ぎると、客席の間を練り歩き玉置が一人でステージに登場。そのシーンだけで客席から盛大な歓声が上がる。そして1曲目に歌い出したのは「からっぽの心で」。シンセサイザーの音色を中心としたアンビエントなトラックをバックに、まずは玉置がそのエモーショナルな歌声を、会場中に響かせる。その贅沢なひと時を終えて、いよいよバンドメンバーもステージに登場。ライブ本編がスタートした。

 バンドと合流し最初に演奏したのは「カリント工場の煙突の上に」。DJ 1,2の繰り出す重厚な機関車のビートの上で、玉置の歌と各々の楽器の音色が翻る。特に、ゴンドウ&武嶋の管楽器の音色は、悠久の時を思わせる豊かな情緒を曲想に注ぎ込んでいた。1番、2番と段々とパートが加わり、演奏がビルドアップする中で、負けずと声量を引き上げていく玉置の様子に、改めてヴォーカリストとしての器の大きさを実感する。ラストは、その爆発的な歌が響き渡り、冒頭から圧巻の歌と演奏が会場を揺るがした。

 今回のツアーは1日2ステージの二部制で行われたが、その一つ一つのステージもまた、大きく二つのパートに分かれる構成となっていた。その前半部では、“玉置流のチェンバー・ミュージック”とでも呼びたくなるアレンジの曲が中心。「純情」の演奏では、歌とともに楽器もまたメロディの大きな放物線を描く。あるいは「ワインレッドの心」では、管楽器の音色が繊細に響き渡り、小規模なクラブ会場ならではの魅力的な演奏を輝かせた。玉置はその中でシンガーであると同時に、タクトを振るう指揮者でもある。「サーチライト」の演奏では、自らライトの明かりを求めるように右へ左へとステージ上を動き回り、曲のイメージをより鮮明に演出した。

 DJ 1,2がステージ上から見事にSEをコントロールしムードを演出した「いつの日も」の演奏で前編は終了。玉置が足早にステージを下り、残された5人が「ビルボードテーマ」と名付けられたインスト・ナンバーを演奏する。先ほどまでの伴奏モードとは打って変わって、激しい演奏の応酬ととなり、スクラッチやサックスのソロも炸裂。改めてバンドのスキルの高さが露となる一幕だった。

 インスト演奏の後は、再び衣装を替えた玉置がオンステージ。ジャジーでおおらかで、どこかエキゾな雰囲気も持つ「君をのせて」の演奏へ。オーディエンスも体をゆったりと揺らし、和やかな手拍子も起こった。そして続く「無言坂」でもジャジーなムードは継続。ヒップホップ的なレイドバックしたビートの上で、管楽器と玉置の歌が力強く鳴り響いた。

 オーガニック&メロウ。それが後半のテーマかな…とこちらが思いかけたとここでムードが一変。激しいハウス調の「キ・ツ・イ」の演奏に移る。サビの箇所では玉置自らが華麗にターンを決め、ひときわ大きな歓声が上がる場面も。見事なステップとともにこの日のハイライトの一つとなった。続く「じれったい」もファンキー&ダンサブルなアレンジで、ゴンドウの素晴らしいフリューゲルホルンのソロも印象的だった。

 会場の空気がすっかり熱くなった後は、その熱をクールダウンするかのようにニューオリンズ風アレンジの「どうにかなるさ」へ。メンバーの紹介と短いソロ・パートを経て演奏が終了し、汽車の汽笛を思わせるSEをバックに、玉置がバンドを送り出した。

 本編ラストは再び玉置一人がステージに残り独唱。「夏の終りのハーモニー」を力強く歌い上げる。途中、玉置が〈ビルボード10周年を飾るハーモニー〉と歌詞を替えて歌う粋なはからいもあり、隅から隅まで力強い充実感に満ちたパフォーマンスの本編を終えた。

 本編が終了し、玉置がステージを去ったあとも拍手は鳴り止まず、アンコールに応えて玉置が再び登場。この日、はじめてアコースティック・ギターを片手に「田園」を弾き語りで披露し始める。その演奏はまさにフォークの醍醐味というべきか、自由度の高い演奏で、軽やかに歌を届けていく。〈仕事ほっぽらかして ほおづえつくあの娘〉という箇所では自らギターに頬杖をついて和ませる。そしてハイライトの〈みんなここにいる〉という箇所では、同じ歌詞を3回繰り返して叫び、その言葉の意味を強調した。

 オープニングからエンディングまで統制された見事な流れを見せるとともに、様々な音楽性をも昇華した完成度の高い“ショウ”となっていたこの日のライブ。玉置浩二というアーティスト/パフォーマーの全能感を改めて体感する、充足感に満ちた時間だった。彼が今後、ライブの場でどのような創作を行っていくのか、ますます楽しみになるライブだった。

Photo:Masanori Naruse

◎公演概要
【玉置浩二】

ビルボードライブ東京
2018年2月11日(日)※終了