15年経った今も第一線で活躍している理由とは? / 『レッド・ピル・ブルース』マルーン5(Album Review)
15年経った今も第一線で活躍している理由とは? / 『レッド・ピル・ブルース』マルーン5(Album Review)

 アプリで“カワイく”加工されたメンバーの顔写真が並べられたジャケ写。正直、これを見て期待薄……と思ったが、ご安心を。悪く言えば狙った売れ線だが、流行を確実に取り入れた外さない展開は、どうやっても否定できない。2002年のデビューから15年経った今も第一線で活躍しているのは、どういう曲やビデオをリリースすれば注目されるか、ファンは納得するかということを、常に意識しているからだろう。

 本作からは、既に3曲のシングルがリリースされている。1stシングル「ドント・ワナ・ノウ」は、【第58回グラミー賞】で最多11部門にノミネートした、ケンドリック・ラマー参加のトロピカル・ハウス。連発するサビが印象的な中毒性の高いダンス・トラックで、全米6位・全英5位の大ヒットを記録した。制作は、彼らの代表曲「ムーブス・ライク・ジャガー」(2010年)を手掛けた、アマー・マリク&ジョン・ライアンが担当している。

 2ndシングルの「コールド」では、全米アルバム・チャートで2作連続の首位獲得が話題となった、フューチャーがラップを担当。売れっ子プロデューサーのベニー・ブランコが手掛けただけはあり、今っぽいクールなトラップ・ソングに仕上がっている。そして、8月末にリリースしたばかりの3rdシングル「ホワット・ラヴァーズ・ドゥ」は、デビュー・アルバム『Ctrl』がロングヒット中の女性R&Bシンガー、SZAとコラボしたエレポップ・チューン。制作陣には、カルヴィン・ハリスやケイティ・ペリーなどの人気シンガーを手掛けるスターラや、スウェーデンの音楽プロデューサー=ネイキッドなどがクレジットされている。

 3曲の先行シングルからも予想できたが、本作『レッド・ピル・ブルース』は、4thアルバム『オーヴァーエクスポーズド』(2012年)や前作『V』(2014年)よりも、さらにR&B色を強めたナンバーが目白押し。エイサップ・ロッキーやランチマネー・ルイス、デビュー曲「イシューズ」でブレイクした女性シンガー・ソングライターのジュリア・マイケルズなど、その他のゲスト陣や、ディプロやリッキー・リード、サーキットなど、制作陣の名前を見てもそれは明らか。

 ザップやザ・タイムを意識したような80年代ファンク「ベスト・フォー・ユー」、大ヒット曲「シュガー」路線の「ヘルプ・ミー・アウト」、マルーン5らしいエレポップ「ウェイト」、不思議な世界観のトラップ・バラード「リップス・オン・ユー」、エイサップ・ロッキーが気だるくラップする「ウィスキー」など、どの曲もシングルとしてリリースできるクオリティの高さ。アダムのファルセットに酔いしれる激甘メロウ「デニム・ジャケット」や、ラテン調のミッドチューン「ベット・マイ・ハート」など、スロウも充実している。ランチマネー・ルイスのラップがイイ具合にアクセントになっている「フー・アイ・アム」や、ファンク・ロック調の「ヴィジョンズ」など、初期の作品に近いナンバーもチラホラ。

Text: 本家 一成

◎リリース情報
『レッド・ピル・ブルース』
マルーン5
2017/11/3 RELEASE