流行りを取り入れつつ、個性も十分表現したアーティスティックな1枚 / 『ホープレス・ファウンテイン・キングダム』ホールジー(Album Review)
流行りを取り入れつつ、個性も十分表現したアーティスティックな1枚 / 『ホープレス・ファウンテイン・キングダム』ホールジー(Album Review)

 2016年最大のヒット曲となった、ザ・チェインスモーカーズの「クローサー」にフィーチャリング・ゲストとして参加したことで大注目を浴びた、米ニュージャージー州出身の女性シンガーソングライター、ホールジー。2015年8月にリリースしたデビュー・アルバム『バッドランズ』からは、「ニュー・アメリカーナ」や「ゴースト」がスマッシュ・ヒットを記録し、同年11月に発売された、ジャスティン・ビーバーの『パーパス』に収録された「ザ・フィーリング」にも参加している。

 そのデビュー作『バッドランズ』は、全米アルバム・チャートで最高位2位を記録し、オーストラリアやカナダ、アイルランドでもTOP3入りを果たした。6月2日にリリースされた『ホープレス・ファウンテイン・キングダム』は、『バッドランズ』からおよそ2年振り、通算2作目となるスタジオ・アルバムで、4月4日にリリースされた先行シングル「ナウ・オア・ネヴァー」が、自己名義のシングルとしては最高位の26位(全米ソング・チャート)をマークした。現在も、チャートを上昇中。

 本作には、世界中で大ヒットを記録しているエド・シーランの『÷』(ディバイド)や、ザ・ウィークエンドの『スターボーイ』、2016年の全米年間シングル・チャート首位に輝いた、ジャスティン・ビーバーの「ラブ・ユアセルフ」などを手掛けたベニー・ブランコ、4月28日に待望のデビュー・アルバム『9』をリリースした、ノルウェー出身のDJ/プロデューサー、カシミア・キャット、アデルの「ハロー」や、シーアの「チープ・スリルズfeat.ショーン・ポール」など、2016年全米No.1ヒットを輩出したグレッグ カースティン等が、プロデューサーとして参加している。

 『ホープレス・ファウンテイン・キングダム』は、大ヒット曲「クローサー」を彷彿させる、フューチャーべース(Future Bass)を起用したナンバーが目白押しで、サウンド自体は煌びやかだが、万人受けするポップ・アルバムというわけではなく、どちらかと言うとアーティスティックな作品に仕上がっている。ミーゴズのクエヴォが参加した「ライ」や、「ナウ・オア・ネヴァー」、「バッド・アット・ラブ」など、トラップ・サウンドを起用したナンバーや、フィフス・ハーモニーのローレン・ジャウリギーがゲスト参加した「ストレンジャーズ」など、流行りの音も取り入れつつ、個性も十分表現したアルバムだ。

 ホールジーらしさが出た、ユニークな旋律の「グッド・モーニング」や「ウォールズ・クッド・トーク」、アデルの「ハロー」を意識したクリスチャン・バラード風の「ソーリー」、タイトル通り絶望的な風景が浮かび上がる、カシミア・キャットが手掛けた「ホープレス」など、芸術的なサウンドにホールジーのセンスを感じられる。シングル候補として挙げたい名曲「アイズ・クローズド」は、すばらしいの一言。

 先行シングルの「ナウ・オア・ネヴァー」と、「クローサー」の大ヒットを受け、本作で全米アルバム・チャート初の首位獲得を狙う、ホールジー。今年は、彼女にとって本格的なブレイク年になるかもしれない。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
『ホープレス・ファウンテイン・キングダム』
ホールジー
2017/6/2 RELEASE