フルサイズミラーレスα用
高性能準広角大口径レンズ


 Eマウント・フルサイズ用の35mmレンズとしてはコンパクトなSonnar T* FE 35㎜ F2.8 ZAがある。それに対して、開放F値が異なるとはいえこの35mmF1.4は、冗談のように大きく重たいレンズだ。
 これほど大きくしてまで、明るさが必要なのか自問自答しながら使ってみると、そんなつまらない考えを破壊するほどの写りのよさをこのレンズは持っていることを知る。絞り開放でも端まで均質な描写は、過度に自己主張することもなく、また軽薄になることもなく、とにかく普通に写る。もちろん平凡という意味ではない。例えるなら、とてつもなくおいしい「普通の水」を飲んでしまったような感覚だ。今までの普通が物足りなくなる危険のある描写といえばわかるだろうか。

鏡胴に絞りリングを搭載する
鏡胴に絞りリングを搭載する

 電子ビューファインダーで、拡大表示しながらのMFも、ピント面と前後に連なるボケのグラデーションに見惚れてしまうほど。「普通の水」に例えたが、むしろ麻薬のようなレンズと言うべきかもしれない。




絞り開放では当然のようにピントは非常に浅く、撮影には神経を使うが、その写りはピントの浅さを過剰に意識させずにスッと目に入ってくるような自然さがある●α7II・絞り優先(絞りf1.4・60分の1秒・+0.7補正)・ISO160・AWB・JPEG
絞り開放では当然のようにピントは非常に浅く、撮影には神経を使うが、その写りはピントの浅さを過剰に意識させずにスッと目に入ってくるような自然さがある●α7II・絞り優先(絞りf1.4・60分の1秒・+0.7補正)・ISO160・AWB・JPEG



デザイン
マニュアルフォーカスで使えと言わんばかりの幅広のフォーカスリングと、絞りリングの目盛りが実用的で見やすい。大口径らしい前玉の大きさも、見た目に頼もしい

使用感・操作感
レンズ径も大きいので、リングによる絞り操作が結構楽しい。絞りのクリックをオフにできるのは動画撮影時には便利。0.3mまで寄れるので、近接での使い勝手も良好

描写性
絞り開放から甘さはなく、同時に過剰な鮮鋭さを感じさせることもない。また、暗部にかけて沈み込む部分の階調も濃密な雰囲気を漂わせるところがあってよい

◆まつうらやすし


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●焦点距離・F値:35mmF1.4●レンズ構成:8群12枚(高度非球面レンズ1枚、非球面レンズ2枚)●最短撮影距離:0.3m●最大撮影倍率:0.18倍●画角:63°●フィルター径:Φ72mm●大きさ・重さ:Φ78.5×112.0mm・約630g●価格(税別):22万円(実売21万5870円)