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物語、岩手の子どもたち

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アサヒカメラ

被災した家をリフォームし再スタートを切ろうとする親子。母親のおなかには新しい命が宿っている/釜石市

被災した家をリフォームし再スタートを切ろうとする親子。母親のおなかには新しい命が宿っている/釜石市

学童たちのクリスマスパーティーで/大槌町

学童たちのクリスマスパーティーで/大槌町

山田高校の卒業式当日のひとコマ/山田町

山田高校の卒業式当日のひとコマ/山田町

山田高校の卒業式/山田町

山田高校の卒業式/山田町

写真展会場でのハービー・山口さん

写真展会場でのハービー・山口さん

 認定NPO法人「国境なき子どもたち」(KNK)が、東京・新宿のアイデムフォトギャラリー「シリウス」で、震災後の岩手の子どもたちの姿を追った写真展を開いている。すべての撮影は写真家のハービー・山口さんが行った。

 ハービーさんの写真と「3.11」との関係は、被災直後にさかのぼる。

 「震災があったほぼ一カ月後でした。放送作家の小山薫堂さんに声をかけていただいて、俳優の渡辺謙さんと一緒に東北へ行ったんです。その後は、個人的に何回も足を運びました。そんな中で、取材の輪もさまざまに広がっていたんです。
 今回の写真については、KNK側が、<すべてがKNKの活動に関連したことじゃなくてもよいんです。ハービーさんの視点で撮ってもらえれば>と言ってくれた。ですので、2011年から続けていることの延長として、撮影して行きました」

 ハービーさんは、自分の作品に、「HOPE」という言葉を時々につける。2012年3月には、写真集『HOPE311 陽、また昇る』を発表している。そこには、未曾有の状況に懸命に立ち向かいながらも、写真家をまっすぐに見つめる人々の瞳、そして微笑が溢れている。


 <こんなに自分の命を保つのに精一杯なはずなのに、人々はカメラに向かって笑顔さえ見せてくれた。東北の人たちというのは、なんという強い精神性を持っているのだろうと僕自身が励まされる思いを強く感じた」(ハービー・山口『HOPE311 陽、また昇る』より)
 

 「あの日」から2年の時間が経った。写真家の目には何が見えたのか。

 「2年経った今、希望を持つ人もいます。反対に、状況がぜんぜん変わっていないことへの深い失望を抱える方々もいます。高齢の方などは、ご自分が生きているうちに状況は変わらないだろう、ということを実感し、悲観されている人もいるでしょう……。
今回僕は、時間の経過と共に、どれだけの人たちの表情が変わっていたのか、その事実を現場で見聞きしようと思ったのです」

 そうして、まずKNKが活動をサポートしている高校や小学校を取材していった。
 「子どもたちにはやはり柔軟な適応性があると思います。震災の恐怖を忘れてはいないでしょうが、彼らなりに笑顔を取り戻していたと感じました。仮に故郷を出ることになっている子どもたちでも、次の町で彼らなりの新しい人生を作るのだろう……。そんな力強さも感じましたね」

 2012年12月、2013年の2月、そして3月に出かけた。卒業式も撮影した。そこには友人の遺影を抱えて式に出席した生徒の姿もある。
「この高校では亡くなった方が2名いたのです。ですが、震災から2年を経て、部活動を一生懸命にかんばる姿や、高校生独特のはじけ方も目にすることができた。町の経済基盤が壊滅し、もし再建の目処が立ってなくても、仙台なり、東京なりに出て生活を続けていくぞ、というエネルギーだって感じたりもしました。ですから、シャッターを切るたびに<どうぞ夢は捨てないで!>と願ってたんです」

 カメラはライカが2台、レンズは28mmと35mmで撮影。中望遠用には、ニコンF100に85mmのレンズ。すべてモノクロームのフィルムを使った。今回のセットは、震災直後に撮影した時と基本的に同じだ。そして、それは、市井の人々の日々の営みを、温かな視線で写真におさめてきたハービーさんのいつもの撮り方だ。特別な場所、特別な境遇におかれた人々かもしれない。でもそこでハービーさんは、ひとしく同じ視線を向ける。岩手の子どもたちに対してもそれは変わらない。

 展示のメインイメージのひとつになっているのは、柿の木の下にたたずむ少女達の写真だ。

 「この写真で、家がいくつか残っているあたりは、全部水に浸かっていたんです。写っている方たちは津波が来たとき丘の上に避難したけれど、自分たちの家の一階は水没してしまったのです。
 左はお母さん。今は生まれましたが、撮った時はお腹が大きかった。そして柿の木は水に浸かってしまったが、去年の夏には実がなった。柿が実り、新しい命が生まれた。父親は長距離トラックの運転手をしていますが、家族で亡くなるものはいなかった。一階が水没してしまった家も、おそらく保険でリフォームできたのでしょう、昔の姿に戻った。そんな希望の一歩。こういった写真は、2011年の4月、僕が最初に行ったときには撮れなかったですね」

 「この写真は希望の1枚なんです」
ハービー・山口さんは写真で希望を追い続ける。

(*この記事は第2回に続きます)




ハービー山口 物語、岩手の子どもたち
開催期間:2013年4月25日~5月8日
会場:アイデムフォトギャラリー「シリウス」
住所:東京都新宿区新宿1-4-10 アイデム本社ビル2F TEL:03-3350-1211
最寄り駅:新宿御苑前
営業時間:10時〜18時
休館日:日(*5月3日〜5月6日は休館)


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