カメラ好きで知られる水野さんにオリンパスから贈られた、ネーム入りのオリンパス ペンE-P1。レンズは17ミリF2.8。カメラは仕事ではコミュニケーションツール、プライベートでは旅のパートナーだという
カメラ好きで知られる水野さんにオリンパスから贈られた、ネーム入りのオリンパス ペンE-P1。レンズは17ミリF2.8。カメラは仕事ではコミュニケーションツール、プライベートでは旅のパートナーだという
自身の劇団「プロペラ犬」による公演の舞台セット。公演後は取り壊されてしまうので思い出とともに写真に閉じ込めたという
自身の劇団「プロペラ犬」による公演の舞台セット。公演後は取り壊されてしまうので思い出とともに写真に閉じ込めたという
沖縄で見かけた反芻中のヤギ。胃から頬に入る一瞬をとらえた。この状態は1秒もないという。撮影のため約2時間ヤギと対峙している
沖縄で見かけた反芻中のヤギ。胃から頬に入る一瞬をとらえた。この状態は1秒もないという。撮影のため約2時間ヤギと対峙している
旅行で訪れたハワイで宿泊した家の庭。日差しが明るく晴れわたっていたので、ペンE-P1のアートフィルター機能「デイドリーム」で撮影。実際に目で見るより柔らかい光に写ったので気に入っている
旅行で訪れたハワイで宿泊した家の庭。日差しが明るく晴れわたっていたので、ペンE-P1のアートフィルター機能「デイドリーム」で撮影。実際に目で見るより柔らかい光に写ったので気に入っている

――カメラ好きですね。

 10年くらい前に、テレビの仕事でインスタントカメラのチェキをいただいて興味がわきました。写真を撮ってきて、といわれて「何を撮ろうかな」と近所を散歩しながら撮影したのがきっかけです。照明技師さんからもらったカラーセロファンをレンズの下半分にだけかけて撮ったりしました。カメラマンの本間日呂志さんのスタジオによく遊びに行っていたので、一眼レフがほしくなって相談したら、一緒にお店に行って選んでくれたんです。コンタックスのアリアでした。「初心者でも扱いやすくていいよ」と。その時期に、本間さんのアシスタントで私と同年代の女性が屋久島に行くというので一緒に行こうってことになって、ふたりでカメラ抱えて撮影旅行に行きました。

――被写体の多い島ですよね。

 すごく楽しかったですね。最初は絞りとか被写界深度とかむずかしかったんですけど、わかってくるとより楽しくなって。しかも、その場で彼女に「いま何で撮ってる?」「開放で撮ってるよ」なんて教えてもらえたので、勉強になりました。屋久島の森って同じような景色が続いてるので、どこにカメラを向けるか、シャッターを押したい場所を探すのがけっこうむずかしかったなと思います。3日間でフィルム50本くらい撮ったつもりでいたんですけど、じつは20本も使ってなくて。「あれ、私こんなに撮ってなかったんだ」って(笑)。たくさん撮るということも、むずかしいんだと知りました。帰ってきて、彼女の写真と見比べたら全然違うんです。同じところで撮ってるのに、景色も画角の切り取り方も違う。どう景色を切り取るか。ものを見る目が養われたというか、最初にカメラマンと旅行に行けてほんと刺激になりましたね。

――いまはオリンパス ペンE-P1ですね。

 はい。アートフィルターの機能がめちゃくちゃ楽しい! オリンパスの方からいただいたので、最初にいろいろ教えてもらって勉強しました。とにかく撮りたいときにすぐ「この機能!」って使いこなしたかったので、専用のガイドブックみたいなものもいっぱい買って。たとえば、晴れわたった日の空に向けてデイドリームというフィルターをつけると、すごく柔らかい雰囲気のある写真になるんです。プロが撮った写真を見ながら、「こういうときに、このフィルターを使ってるんだ」とか、まねして撮るみたいなこともしています。パソコンが苦手なので、写真を自分で加工したりすることができないんです。このカメラだと1台で完結して、いろいろなことができちゃうのが楽しいですね。ラフモノクロームはザラッとした感じになるので、いい写真が撮れた気分になる。森山大道さんの気持ちに勝手になれる(笑)。でも、ただモノクロで撮っても、あんなに迫力のある写真にはならないんだなって、実際に撮ってみてわかりました。いちばん好きなフィルターはポップアート。蜷川実花さんの色の世界がすごく好きです。海外に行くと、アジアでもアフリカでもマーケットにたくさんの色があふれているので、ポップアートを使うと面白いですね。

――何を撮りますか?

 仕事では、舞台をやっていたときなど楽屋でみんなを撮って、その日のうちに写真を配ったりしました。中世のロシアが舞台の作品だったときは衣装がゴージャスだったんですよ。役者って楽屋で撮らないので、衣装を着た状態の写真って手元に残らないんです。それがもったいないなと思っていたのでプレゼントしたら、みんな喜んでくれました。そういうとき、カメラはコミュニケーションツールですね。

 また、写真を撮るのが目的で旅行に行ったりします。海外ひとり旅のときはパートナー。カメラがなかったら、ひとり旅なんて行ってないですね。「こいつがいるから持って行こう!」って感じです(笑)。海外は面白いものがいっぱいあるので、動物や景色、小物、雑貨などを撮ります。ペンにしてからは楽しくて、このフィルターを試そうとか露出を変えてみようとか、レンズを換えようとか、いろいろ試したくなっちゃってすっごい時間がかかる。ひとつ被写体を見つけたらなかなかそこから動かない、みたいになっちゃいます。沖縄では反芻(はんすう)しているヤギをじっと見ていたら、のどのところがたこ焼きくらいの大きさに盛りあがってきて、ポン!とほっぺたがふくらむんですよ。口角があがって笑ってるみたいな顔になる。「わー、どうしてもこの瞬間を撮りたい!」と2時間くらいにらみあっていました。撮れたときは、ものすごい達成感がありましたね。ふだんは全然気長じゃないですけど、これを撮りたいとなると待てるんです。(笑)

※このインタビューは「アサヒカメラ 2011年4月増大号」に掲載されたものです