世の中予想もしないことが起きるものだ。森友学園問題では財務省幹部による公文書の改竄が行われ、中央官庁が集まる霞が関の27機関が法律で定められている障害者雇用の数を水増ししていた。法律を守るのが必須条件の組織がルールを破っていたとは、行政組織の根幹を揺るがす事態である。「正直、驚いた」と中西宏明・経団連会長は記者会見で語ったようだが、もっと怒りを政府にぶつけるべきだろう。
今年4月から国・地方公共団体と民間企業に義務付けられている障害者の法定雇用率はそれぞれ2.3%、2.0%から0.2ポイントずつ引き上げられた。アエラの4月9日号で法定雇用率の引き上げに際して企業が悪戦苦闘している様子をレポートした。大手エアコンメーカー、ダイキン工業の子会社「ダイキンサンライズ摂津」(大阪府摂津市)で働く約150人のうち障害者は140人近く。サンライズが1993年に設立されてから、つくる製品の見直しや、障害者が働きやすいラインづくりなどを繰り返し、雇用数を増やしてきた。そのおかげで、この4月の法定雇用率の引き上げにも対応できた。
ダイキンなど障害者雇用に積極的な企業は増えてはいるが法定雇用率を達成しているのはまだ半数程度。今回の法定雇用率の引き上げで多くの会社の人事担当者、CSR(企業の社会的責任)担当者らは頭を抱えている。民間企業で法定雇用率が守れないと不足している障害者雇用につき1人当たり月額5万円を国に納付しなければならないからだ。
また上場企業では障害者雇用の現状についてCSR報告書などに記述するケースが多く、法定雇用率が守られていないと株主などからの追及もある。国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)でも障害者雇用は企業に求められる必須条件だ。各社はこれまで法定雇用率達成のため身体障害者や知的障害者を中心に採用してきたが、今回の法定雇用率の見直しで精神障害者も雇用義務の対象となった。担当者らは「精神障害者の受け入れのためにさらなる工夫が必要だ」と受け止めていた。