――認定員をしていて「キツい」と思ったことはありますか?
「1分間で箸を使って『M&M’S』(チョコレート)を最も多く食べる」といった早食いの記録では、口の中に残っていないかを確認する必要があって、それはけっこう……。認定員の通る道というか。あと、挑戦する側も嫌だと思うんですけど、食べたかどうかが重要なので……。
――口の中でバリバリになっているのを想像してしまいました……。認定員の方は世界を飛び回っていますよね。
パスポートがすごいことになるので、追加のページを作ってもらったりもしました。あまりにも行き来しているので、怪しまれたこともあります。でも「ギネス世界記録の仕事で……」と言うと、さっきまで怖かったのに「何の記録にきたの?」とフランクになったりも!
――認定員にはどうすればなれるんですか?
ギネスワールドレコーズ社では認定員になるまでのトレーニングがあります。一番大切なのはギネス世界記録の理念なので、ここに時間をかけています。その後、実践的なことを学んで、イギリスの本社で1週間の最終研修があって、ちょっとしたテストもあります。
――何か特殊能力みたいなものは必要なんでしょうか。
どうしても必要になるのは英語力です。ガイドラインも全て英語で作っています。そのルールで世界中の人が挑戦するので、曖昧な表現はダメです。バイリンガルレベルの英語力は必要になってきます。
――ところで、石川さんは何か世界一を持っているんですか?
持っていないです。認定員をしていて「やってみたいな」と思うカテゴリーもあります。でも、ギネス世界記録の認定には第三者が証人として立つ必要があるので、社員は持てないんです。
――最もギネスに近いところにいるのに。挑戦者それぞれにエピソードがあって、つい感情移入してしまったりしませんか?
1955年にギネス世界記録が始まって、今も世界中の人が真剣に思ってくれています。そのためには私たちも真剣で中立である必要があるんです。ここが崩れてしまうと、意味がなくなってしまいます。頑張っている人たちに「記録になりませんでした」と言わなければいけないこともたくさんあるので、そこは大変です。でも、認定されなくても「また挑戦します」と言ってくださる方も多いんです。昨年は長崎県にあるハウステンボスが「ウォーリーの格好をして集まった最多人数」でギネス世界記録に認定されましたが、3度目の挑戦での世界一でした。
町おこしとしてギネス世界記録に挑戦された方も、企画、参加者集め、練習という流れの中でお年寄りの方々と町の野球部の男の子が交流できたという声もありました。そういう声を聞くとやりがいを感じたりもします。
5万件の記録の中で、得意なものを探していただいて、挑戦していただけると嬉しいですね。(AERA dot. 編集部・福井しほ)