「アホとは戦うな。時間の無駄である」と提唱する、元政治家であり、現在はシンガポール・リークワンユー政治大学院で教鞭を執る田村耕太郎さん。しかし、41万部を突破した著書『頭に来てもアホとは戦うな!』の読者からは、「それでも戦ってしまう……」と多くの悩みの声が寄せられているという。
日々の仕事・暮らしの中で「アホ」に悩んでいるあなたに、ちょっとでも気持ちが楽になるヒントを田村さんが提案する連載「アホから解放される相談室」。今回は「権力をもったアホの対処法」について。
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【相談】取引先で非常に付き合いづらい相手がいます。怒りっぽく、小さなことを大きく騒ぎ立てます。だったら早く逃げればいいのでは?と思われるかも知れませんが、うちの会社にとっては大型顧客であり、それなりに影響力のある立場の人です。
そんな自分の強い立場を利用して怒っているふしもあるのですが、会社もひたすら「我慢して付き合ってくれ」の一点張りで、とにかく逃げるに逃げられません。こうした人物とストレスなく付き合っていく方法を教えてください。
■相手の戦意を出鼻でくじこう!
ボーっと見ていたドキュメンタリーで、世界最高クラスのSPの人が赤裸々にボディガードの実態を語っていた部分が印象に残っている。
「我々の基本中の基本は戦うことではない。我々の基本は“相手の戦意をくじくこと”。“絶対してはならないのは相手の戦意を高めること”。相手が武器を持っていれば体格差も格闘技経験もほとんど役に立たない。すでに高揚している不審者の戦意を高めたら高い代償を支払わないといけない」
と淡々に語っていた。さらには「ハリウッド映画と現実は違う。これは不審者に狙われた人の対処方法も同じ。相手は、たださえ高揚した戦意であなたを狙っている。その人物の戦意をくじくことが真っ先にやるべきことだ。相手の戦意を高めてはいけない。そしてその場を素早く立ち去る。その状況では、それだけでいかなる護身術より役に立つ」とも。