立ち会っていた夫は、赤ちゃんの頭がコーンヘッドみたいに長細く尖っているのをしきりに心配していた。
「水野さんは運動されていただけあっていきむのが上手でしたね。赤ちゃんの頭も真っ直ぐに伸びてますし」
と最後に看護師さんに褒められた。
いきむのにも、上手い下手があるらしい。
着替えて病室を移動した。
まだお腹はぜんぜん引っ込んでないし、点滴でむくんで体重も全然落ちてない。
会陰部はヒリヒリ痛いし、股関節が痛くてよちよちしか歩けない。
看護師さんに言わせると、産後の母体は、全治1カ月の大怪我を負ったようなものらしい。
後陣痛は大したことはなかった。強めの生理痛くらい。
ベッドに横たわってやっと静かに身体を休めていると、じわじわと嬉しさがこみ上げて来た。
出産って、本当に壮絶。
かかる時間やスタイルや痛みはそれぞれだけど、全てのお産が命懸けなのだと身をもって知った。
あの時、こんな痛い思いは二度と嫌だと思った。
不思議なもので、あれから一年経った今は、あのトラウマレベルの痛みの記憶も薄れ、
「若かったら、もう一人産みたかったなあ」
と思う。
水野美紀
水野美紀 読み聞かせが志村けんの「変なおじさん」に負けた日