立ち会っていた夫は、赤ちゃんの頭がコーンヘッドみたいに長細く尖っているのをしきりに心配していた。

「水野さんは運動されていただけあっていきむのが上手でしたね。赤ちゃんの頭も真っ直ぐに伸びてますし」

 と最後に看護師さんに褒められた。

 いきむのにも、上手い下手があるらしい。

 着替えて病室を移動した。

 まだお腹はぜんぜん引っ込んでないし、点滴でむくんで体重も全然落ちてない。

 会陰部はヒリヒリ痛いし、股関節が痛くてよちよちしか歩けない。

 看護師さんに言わせると、産後の母体は、全治1カ月の大怪我を負ったようなものらしい。

 後陣痛は大したことはなかった。強めの生理痛くらい。

 ベッドに横たわってやっと静かに身体を休めていると、じわじわと嬉しさがこみ上げて来た。

 出産って、本当に壮絶。

 かかる時間やスタイルや痛みはそれぞれだけど、全てのお産が命懸けなのだと身をもって知った。

 あの時、こんな痛い思いは二度と嫌だと思った。

 不思議なもので、あれから一年経った今は、あのトラウマレベルの痛みの記憶も薄れ、

「若かったら、もう一人産みたかったなあ」

 と思う。

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水野美紀

水野美紀

水野美紀(みずの・みき)1974年、三重県出身。女優。1987年にデビュー。以後、フジテレビ系ドラマ・映画『踊る大捜査線』シリーズをはじめ、映画、テレビドラマ、CMなど、数多くの作品に出演。最近では、舞台やエッセイの執筆を手掛けるなど、活動の幅を広げている。2016年に結婚、2017年に第一子の出産を発表した

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