松本・地下鉄両サリン事件などで計29人の犠牲者を出した一連のオウム真理教事件で、死刑が確定していた教祖の麻原彰晃(しょうこう)死刑囚(63)=本名・松本智津夫(ちづお)=、井上嘉浩死刑囚(48)、早川紀代秀死刑囚(68)、中川智正死刑囚(55)ら7人の死刑が6日午前、東京拘置所などで執行された。
【写真】サリンガスの発生する液体がまかれた地下鉄日比谷線車内
教団が起こした事件の死刑囚は計13人おり、執行は初めてで、上川陽子法相が執行命令を出した。
逮捕から23年。犯罪史上類を見ないオウム 事件は大きな節目を迎えた。
麻原死刑囚が収容されていた東京拘置所前には記者やカメラマンが数十名集まり、警察官が厳重な警備にあたるなど騒然とした雰囲気になっている。テレビ中継では、英語で世界に向けて放送している局もあった。近所に住む70代の男性は、「エリートたちがなぜ、洗脳されてしまったのか。いまだにわからないことの多い事件だった」と話す。
6日、朝の情報番組では内容を変更し、死刑執行について報じる番組が相次いだ。地下鉄サリン事件当時の映像や松本死刑囚の映像が流れ、東京拘置所からの中継に切り替える番組も見られた。
執行の知らせが入るたび、テロップで死刑囚の名前が報じられる様子にインターネット上では違和感を抱く声も多く上がっている。インターネット上では、「死をショーにしてるみたい」「死刑執行までショーにしているようで怖さを感じる」「リアルタイムで報道するなんてまるで死刑執行ショー」「死刑の実況中継なんて異様すぎる」など、今回の死刑執行の報道に違和感を抱く声も多く見られた。
麻原、井上ら死刑囚は地下鉄サリン事件など10の事件に関与したとして、殺人などの罪に問われた。麻原死刑囚の命令の下、井上死刑囚は地下鉄サリン事件などで指揮役を務めた。今回死刑が執行された13人のうち7人は、今年3月に東京拘置所から別の5カ所の拘置所に移送されていた。そのころから、「死刑執行は近い」との見方が出ていた。法務省関係者は言う。
「来年春には天皇陛下が退位され、平成が終わります。皇太子さまが天皇に即位されるまでには行事も多く、恩赦の実施も検討されています。お祝いムードの中での死刑執行は難しいのが実情です。今年1月にはオウムの裁判は終結しており、平成で起きたことは平成で終わらせるのではとの見方も出ていました」
一方で、警察関係者は死刑執行後に起きる事態を警戒している。
「麻原の死刑が執行されたことで、残っている信者は、麻原をイエス・キリストと同じように不当な裁判による死刑を受けた受難者とみなし、さらに神格化する可能性もある。警察はいま、報復テロを警戒しています」(官邸関係者)
菅義偉官房長官は6日午前の記者会見で、オウム真理教元幹部の死刑執行を受け、「警察当局において万全の態勢を取る」と強調した。菅長官は麻原死刑囚の刑執行に関し、「報告を受けている」と認めた上で、「法相が会見する」と詳細についての説明は避けた。