「この本を書くにあたりいろいろな人と話をしていて、日本人は想像以上に空気を読むことに気を使っていることがわかりました」そう話すのは、『空気を読まずに0.1秒で好かれる方法。』(朝日新聞出版刊)の著者である柳沼佐千子さんです。
仕事をスムーズに運ぶためには、空気を読み、周囲の人を不快にしないことが、社会人として当然備えるべき能力だと思われています。でも、一生懸命空気を読んだからといって、それだけで営業成績があがったり、苦手なあの人との関係が改善したりするとは限りません。それどころか、ちゃんと空気を読めているだろうかという不安から気持ちをすり減らし、疲れを感じている人も少なくないでしょう。
「でも、空気を読まなかったら、それこそイタイ人と思われるのではないか」。そんな不安を、柳沼さんは一刀両断に切り捨てます。
子どものころから人付き合いが苦手で、社会人になってもなお人間関係に悩みを抱えていたという柳沼さん。そんな状況をどうにかしたいという思いから、コミュニケーションをはじめ、心理学や脳科学の勉強を重ねました。そして、自ら実験台となり、試行錯誤を繰り返しました。こうしてわかったのが、「相手が好意を抱くかどうかは空気を読む、読まないに関係ない」ということでした。
脳科学の研究によると、人が相手に対して印象を持つのに要する時間はわずかに0.1秒。そこには理性が入り込む余地はなく、ぱっと見で好きか嫌いのスイッチが入ります。つまり、空気を読む間もないほどのあっという間に判断が下されているのです。むしろ、空気を読んでいたら、「好き」のスイッチを入れるチャンスを逃してしまいます。
そして、本人は自分がスイッチを入れたことに気づかないので、意識的に切り替えることもなく、一度入ったスイッチはそのままになることがほとんどです。だから、もし会った瞬間に相手に「好き」のスイッチを入れさせることができれば、多くの場合、ずっと好意的に見てもらうことができるのです。それぐらい、第一印象は強烈なインパクトを与えるものなのです。
では、どうやったら「好き」のスイッチを入れさせることができるのでしょうか。柳沼さんはその答えを脳の特徴から導きだしました。