「アホとは戦うな。時間の無駄である」と提唱する、元政治家であり、現在はシンガポール・リークワンユー政治大学院で教鞭を執る田村耕太郎さん。しかし、41万部を突破した著書『頭に来てもアホとは戦うな!』の読者からは、「それでも戦ってしまう……」と多くの悩みの声が寄せられているという。
日々の仕事・暮らしの中で「アホ」に悩んでいるあなたに、ちょっとでも気持ちが楽になるヒントを田村さんが提案する連載「アホから解放される相談室」。今回は「議論するアホ」について。
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【相談】会議の場で、目障りなアホがいます。何かと私の意見を批判してきたリ、つっかかってくるのです。だからといって適切に言い返すこともできず、あとになって「こう言えばよかった!」と悔しい思いをしています。何とかこの人を論破する方法などないものでしょうか。
■「雨降って地固まる」なんて殆どない
まず知っておいてほしいのは、「雨降って地固まる」なんて殆どないということです。大人の本気の議論ほど危険なものはありません。論破などもってのほか、議論そのものが人間関係を非常に危うくさせるのです。
特に日本人の場合、どんなに正論だとしても、その意見を言われた側は個人攻撃と取りがちです。大人になったら、「議論してぶつかりあってその後わかりあって肩組んでさらに仲良くなるとかほとんどありえない」と思った方がいいでしょう。
仮に白熱議論して仲良くなれたとあなたが思っていても、相手は消えない恨みを持っているかもしれません。
大人で本気で議論していいのは、学者や評論家やジャーナリストでしょうが、そういう人でも、長く業界で生き残っている人は、上手に議論を避け、一部おっさんになりすぎて感情的になってカッとしてやっちゃう場合を除いて、殆どが自身の利益のためのポジショントークに専念しておられるので要注意。
そういう人に踊らされて熱い議論やってしまって身もふたもなくなる人も、まっすぐな日本人の方に多いのでご留意を。
相手の行動や考えを変えたかったら、まず相手の心をできるだけ正確に読み、お互いの共通利益を探します。そして、そちらを徐々に示しながら穏やかに笑顔で、相手や相手の言い分を過剰にならない範囲でリスペクトしながら誘導するのがベターでしょう。
議論やディベートを頭の中で、頭の体操としてやるのはとってもいいことですが、意味もなくエネルギーや時間を無駄にする形で熱くなって、余計なことを書いたり言ったりするのは、議論そのものが根本から間違っていることより、愚かかもしれません。
正義感を発揮したい場合こそ、真正面から行かない方がいいのです。
それでもどうしても議論したくなってしまったら、とにかくひどい言葉だけは絶対使わないことです。自分から先に汚れていきます。じっくり共通利益を持ちそうな仲間を作って流れを築くのが得策です。
かくいう私もなかなかそうはできませんが……。