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「高校のときも、大学のときも、女の子を好きになる感覚はありました。でも、ダメなことだと思ってました。男性も好きになるし、女性を好きな気持ちには蓋をしないといけない、と」
女性パートナーとの交際をウェブメディアを通して告白した勝間和代さんだが、同時にカミングアウトの困難さも明かしている。性的マイノリティに限らずとも、自分にとって大事な、しかしそれまで言えなかったことを誰かに打ち明けることは、勇気のいる行為だ。
「だからこそ、カミングアウトをめぐっての様々な体験やその背景を彫り下げることは、人と人がどう出会い、わかり合っていくのか、問ういことにつながるテーマでもある」
そう語るのは、文化人類学者の砂川秀樹さんだ。著書『カミングアウト』(朝日新書)には、カミングアウトをした当時者の葛藤と、それを受け止める家族の戸惑いの様子が、実例で克明に描かれている。そのひとつが、自分がレズビアンであると両親に紹介した香織さん(仮名)の例だ。
香織さん(仮名)は中学生の頃、はじめて女性を好きだと気づいた。ただ、女性が好きなことを両親に言うつもりは、ずっとなかったという。仕事を始めるようになって、「結婚とかは考えない?」と両親に言われることが増えてきても、「するつもりはない」ときっぱり言い返した。
そんな香織さんは、30歳になって、一つ年上の佳奈さん(仮名)と付き合い始め、一緒に住むようになった。「友人と住む」と伝えられた香織さんの両親は、それを不思議には思わなかったという。それどころか、香織さんと佳奈さん、香織さんの両親と四人で一緒に食事するようになった。その食事の席で、香織さんがカミングアウトを真剣に考える出来事があったという。
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「両親は、私たちのことに気づいていて、その上で理解して迎えているのではないかと思うときもありました」(香織さん)
しかし、実家で一緒に食事をしているときに、母親が佳奈さんに言った言葉に、そうじゃないことを思い知らされた。