これに対して、昨秋、解散総選挙を思案していた安倍総理は、都議選と衆院選のことを考えて、評判が下がる骨抜きの受動喫煙対策法案を推進するのは得策ではないと考え、法案内容の決定を先送りした。先送りすれば強い批判は起きず、選挙の争点にもなりにくいという読みである。小池都知事のパンチをかわしてクリンチで応じたというところだ。

 衆議院選挙では、小池都知事の独り相撲で、安倍自民大勝、小池希望の党大敗という結果になった。衆院選が終わり、19年の統一地方選と同年夏の参議院選挙までは大きな選挙がないという状況になると、安倍総理は元々狙っていた骨抜き法案で進める方針を明確にした。選挙戦が終わった小池都知事も夏の積極姿勢から一転、国の法案を見てから決めると言って、当初示していた厳しい条例の提出をやめてしまった。この時は、「やはり、昨夏の公約は単なる人気取りだったのか」と支持者を落胆させた。

 ちなみに、中小飲食店業界は自民党のみならず、公明党の重要な支持基盤でもある。小池都知事としては、都政における公明党の協力を得るために、受動喫煙対策を取引に使おうと考えたという面もあるのだろう。いずれにしても、この時点で、日本の受動喫煙対策は、国際標準からほど遠いものになる可能性が非常に高くなった。

■受動喫煙対策を再び武器にした小池都知事

 小池都知事が受動喫煙愛策で大幅に後退したのを見た安倍総理は、冒頭に紹介したようなとんでもない骨抜き法案を3月9日に国会に提出した。小池都知事が戦いを挑んでこない限り、この法案は何の問題もなく通ると踏んで、安心していたのではないだろうか。

 一方、昨秋の衆院選大敗以来、事実上の謹慎状態だった小池都知事は、3月まではおとなしかったが、春になって、安倍政権の支持率が急落し始めると、再び態度を一変。4月20日に受動喫煙条例の骨子案を公表した。3月までは、国の規制との整合性を図ると言っていたにもかかわらず、その骨子案は、安倍政権の法案よりもはるかに厳しい内容のものとなっている。そのポイントは以下のとおりだ。

 学校、病院、児童福祉施設等、行政機関などは敷地内禁煙(屋外喫煙場所設置可)とするが、幼稚園、保育所、小学校、中学校、高等学校等の施設は屋外喫煙場所設置も不可とする

 飲食店などでは、原則屋内禁煙(喫煙専用室内のみで喫煙可)とする。小規模だからというだけでの例外は認めない。

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