2018年シーズンが開幕して約1カ月が経ち、連日熱戦が繰り広げられているが、懐かしいプロ野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、80~90年代の“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「悪天候に振り回された人々編」だ。
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試合中に突然ノックが始まり、続いて打撃練習……。こんな珍風景が繰り広げられたのが1980年7月7日の近鉄vs西武(西武)。
この日は試合開始とともに雨が降りだし、ようやくやんだと思ったら、6回裏、西武の攻撃中に濃霧が立ちこめてきた。
近鉄・西本幸雄監督が「守っていてもボールが見えない」と抗議し、「テスト」と称して外野にノックをするよう要請。審判団が受け入れると、仰木彬コーチを呼び、センター・平野光泰にノックを始めた。
「ベンチから外野の線審のポケットに手を入れているのか、出しているのかもわからんくらいや。野球をやれる状況やなかった」と言う西本監督だが、この時点で近鉄は3点をリードしていたので、コールドゲーム狙いは明らか。
もちろん、西武としては「勝ち逃げは許さん!」だ。公平を期するために城戸則文コーチが立花義家にノックした。
ところが、「これくらいの霧ならよく見えますよ」と立花がゴーサインを出したのに対し、平野は仰木コーチが故意に空振りすると、阿吽の呼吸(?)であさっての方角に走り出し、「続行は無理」とアピール。これではテストにならない。
そこで今度は藤瀬史朗が打撃投手を務め、マニエルが打ったボールを平野と立花が追うことになったが、8本打っても守っているところに全然打球が飛ばない。
この茶番劇で試合は28分も中断し、再開後の7回にも5分中断したため、終了は22時42分までずれ込んだ。
道仏訓審判は「特にあの回は霧がひどかった。しかも、霧の状態が激しく変化するので、再開するかどうかの判断が難しかった」と説明したが、西武・根本陸夫監督は「審判団の不手際なのに呆れかえった。マニエルに打撃練習まがいのことをさせるなど言語道断。あえて抗議はしなかったが、“君たちが恥をかくことになるんだぞ”とだけ言っておいた」と皮肉まじりにチクり。
いずれにしても、試合を中断して30分近くもテストだなんて、のんびりした時代だったようで……。