その姿勢はとても貪欲であり、一軍に帯同中はチームに数多くいる先輩サウスポーにいろいろと質問をして回ったそうだ。

 木塚敦志ピッチングコーチは、櫻井について「コントロールも悪くないし、ボールに“こうしたい”という意志がある。一軍レベルで十分に通用するのはオープン戦でわかりました」と言うと、こちらに次のように尋ねてきた。

「清宮(幸太郎)君との試合は見ましたか?」

 3月11日の日本ハムとのオープン戦、櫻井は6回裏のマウンドに立った。制球が乱れ、二死満塁のピンチになると、バッターに清宮を迎えた。両者は高校時代からライバル関係にあり、高2の秋季大会では櫻井が清宮から5三振を奪っている。プロになって初めての対戦、櫻井はスライダーで空振りとファウルを誘って追い込むと、最後はしっかりと腕を振った外角低めのストレートで見逃しの三振を奪った。

 木塚コーチはあの場面を振り返る。

「彼の良さは“放る度胸”を持っていることなんです。あの清宮君の打席だけちょっと変わったというか、ピンチを迎えて改めてエンジンをかけられるピッチャーというのはそうはいない。どちらかと言うとブルペンで投げているよりもマウンドのほうが良いボールを投げているようだし、気質やハートの部分で期待できるところはありますよね」

 櫻井はオープン戦で結果を出し、開幕一軍も囁かれたが、結果は二軍スタートとなった。櫻井に期待する声も多かったものの、年齢や体力面、今後の成長を考えれば、じっくりとファームで育成していくのが本人にとってもベターだろう。

 ラミレス監督もその能力には太鼓判を押している。

「事実、二軍に行かせるのは難しい判断だった。ただ、リーグの左の強打者を考えると、彼らは我慢強くボールを見ている。櫻井は比較的球数が多く、ボール先行のパターンになることもあるので、このままだとフォアボールが多くなる可能性がある。(オープン戦では)一軍である程度結果を残し、良いイメージを残してくれたので、制球など細かい部分をファームでやってもらい、チャンスがあれば一軍に上げたい」

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