──貸し付けも特例でしたが、その後も賃料の大幅値下げ、さらに8億2200万円もの大幅な値引きを経て、国有地は最後に売却されました。
2つの決裁文書が書かれた2015年2月から4月までが、あとにも続く特例の“ブレイクスルー”になったと私は考えています。
籠池氏は、近畿財務局が出した年額4200万円の貸付料にも「高い」と言って、国有地の軟弱地盤を理由に賃料の値下げを求めます。これに対しても近畿財務局は最初は拒否しました。ところが、2015年1月に不動産鑑定をしたのに、3カ月後の4月に同じ不動産会社に再び鑑定書を出してもらっています。2回目の鑑定では土地の評価額が下がっていて、5月に年額2730万円の賃料で契約することになります。
──なるほど。しかし籠池氏は、これでも「賃料が高い」と言って、2015年10月に昭恵夫人付きの谷査恵子秘書官に手紙を送り、さらなる値下げなどを求めました。それに対して谷氏は財務省に問い合わせをし、11月17日にその結果をFAXで籠池氏に伝えました。昭恵夫人は同年9月5日に小学校の名誉校長に就任し、当時、財務省はその事実を知っていたことを認めています。
特例と特例をいくつも組み合わせ、賃料はすでに安くなっていた。そこで出てきたのが、2016年3月11日に出てきた「新しいゴミが出てきた」というストーリーです。籠池氏は、ゴミの処分費用を国有地の売却費用から差し引くことを求め、財務省もそれに応じました。
当時、地中にどの程度の量のゴミがあるかについては、ちゃんと調査されていません。調査自体は近畿財務局の依頼で、森友学園の弁護士や設計会社、建築業者らのメールのやり取りでは、財務省はゴミの有無に関係なく、見積もりさえ出せば大丈夫だと受け取っていました。
その金額も、籠池氏が求めていた「ゼロ円」に近い額にすることが目的でした。籠池氏が谷氏に求めていた有益費(すでに完了していたごみ撤去や汚染の除染費用)の早期支払いは、民法上では貸付が終わった時点で払えば大丈夫なのに、特別に予算措置(1億3176万円)をして4月に支払われることになっていた。結果として、有益費の金額を下回らない値段で、森友学園と財務省が取り引きをした。9億5600万円の国有地が8億2200万円も値引きされ、1億3400万円で払い下げられたのです。