ボビー・ウーマックの名がロック・ファンのあいだでも広く知られるようになったそのきっかけは、ローリング・ストーンズが1964年に彼の曲「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」を取り上げて大ヒットさせたことだろう。まだまだなにもわからなかったころで、「尊敬する偉大な黒人アーティストの曲をカヴァーしたのだなあ」などと受け止めてしまったのだが、かなりあとになってから、ミックやキースよりボビーのほうが年下だということを知った。思い返せば、勝手な思い込みはいけないのだと教えられた、じつに貴重な体験でもありました。
クリス・レアは、イングランド北部ミドルズブラ出身のシンガー・ソングライター。ちょっとかすれ気味で、骨太の低い声を生かしたアダルト・コンテンポラリー風な作風で、1970年代末から80年代にかけて、「フール」「ジョセフィン」「ザ・ロード・トゥ・ヘル」など多くのヒット曲を放っている。彼もまた優れたギタリストであり、レコーディング作品ではあまり聞かせることがなかったが、ドゥエイン・オールマンやローウェル・ジョージからも影響を受けたというスライド・ギターはなかなかのものだった。
恥ずかしいのでタイトルは明かさないが、クリス・レアが80年代半ばに発表したアルバムが、じつは、僕の国内盤ライナーノーツ、デビュー作。30歳過ぎてのことながら、若書きというか、思い込み過多というか……。ああ、恥ずかしい。(音楽ライター・大友博)