もし両軍激突となったら…(※イメージ)
もし両軍激突となったら…(※イメージ)
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 尖閣諸島周辺で、中国公船の領海侵入が続いている。中国側の挑発行為がエスカレートし、両軍の激突となった場合、どちらが勝つのだろうか? 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が本格的な戦争になることを想定してシミュレーションした。

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 中国海軍からは浙江省寧波を司令部とする東海艦隊が、海上自衛隊からは4個護衛隊群のうち、おそらく佐世保の第2護衛隊群が出動するだろう。東海艦隊は駆逐艦とフリゲートを30隻以上、潜水艦、揚陸艦をそれぞれ20隻以上も擁しており、そのうち3分の1を振り分けるとしても、優に20隻以上の大艦隊となる。

 他方、海自のほうは水上艦艇が8隻。他に潜水艦が数隻参加することになる。数では圧倒的に不利な海自だが、艦艇の性能は上だから、一方的に負けるということはないだろう。ただし、潜水艦戦力の差は日本側に非常に厳しい。中国側の潜水艦は海自よりもかなり旧式のものばかりで、対潜哨戒能力も海自の圧勝だが、海中に潜む潜水艦を実戦で見つけるのは実際には非常に難しく、数の多いほうが有利になる。海自の護衛艦も無防備に動き回ることはできない。

 しかし、この程度の戦力の差は、現実にはほとんど意味がない。いざとなれば日中双方とも援軍を短時間で投入できるが、自衛隊も中国軍も、戦闘機や艦艇から発射する長射程ミサイルを大量に持つ強力な軍隊であり、総力で戦うにはこの海域は狭すぎるのだ。

 これほどの戦力同士が戦えば、戦域は尖閣周辺海域だけには収まらず、上海や沖縄本島まで、必然的に広がることになる。しかし、そこまで戦域を拡大すれば、国家同士の全面戦争だ。当然ながら米軍も参戦する。中国軍もよもやそこまでできまい。

 つまり、尖閣海戦という局地戦で、どちらかが完全に勝利を収めることはないのである。

※週刊朝日 2012年10月5日号