Windows VistaやGoogle Chromeの開発に携わるなど、世界のトップ企業でエンジニアを歴任し、現在はフリーランス技術者として活躍する及川卓也さん。早稲田大学OBである及川さんが、新しい世界に飛び込む行動力の源について、「早稲田理工 by AERA 2018」(朝日新聞出版)で語った。
* * *
名だたるIT企業で活躍した及川さん。意外なことに高校時代はジャーナリストや考古学者に憧れていたという。
「早稲田の理工学部へ進学したのは親の勧めで、あまり勉強熱心ではありませんでしたね。周りには年上の友人が多く、一緒に喫茶店に入り浸ったり、バンドを組んで早稲田祭で演奏したりしていました」

本格的にコンピューターの勉強を始めたのは、大学3年生のときだ。父が大病を患ったことをきっかけに「自分も何かしなければ」と思い立ち、独学で情報処理技術者試験に合格。探査工学の研究室に所属してからは、プログラミングに没頭した。
卒業後はコンピューターメーカー、日本ディジタルイクイップメント(DEC)へ。
「大型機主流の時代にミニコンピューターという画期的なコンセプトを打ち出した会社です。当時はIBMを抜いて業界1位に迫る勢いがありました」
9年後にはマイクロソフトに転職。Windows Vistaの開発統括を務めた。開発が終了するとグーグルへ転職。マネージャーを務め、Google Chromeの開発に関わった。フリーランスとなった現在は、起業まもない会社の組織づくりやプロダクト戦略のアドバイザーを務めるかたわら、被災地復興に役立つシステム構築といった社会貢献活動にも取り組む。
■自分を変えたいときは環境を変えればいい
いわく「ぼくは人と同じことを良しとしない変わり者」。ソフトな口調とは裏腹に、語られる言葉の端々からは、新しい世界に飛び込むリスクをむしろ楽しんでいる様子が伝わってくる。しなやかさと気骨を兼ね備えた人だ。