脱北者の手記を集めた伊藤名誉教授は言う。

北朝鮮は孤立しているように見えて、国際的なプレッシャーを気にすることも事実です。国連の人権委員会で女性が差別的な扱いを受けていることが問題になると『女性の日』を設けて、洗濯などの家事が免除される日を設けたこともある。こういった対応をしながら、対外工作を展開するのです」

 独自の戦略で外交攻勢を続ける北朝鮮。13日には、韓国での公演を成功裏に終えた三池淵管弦楽団のメンバーと面会。金正恩氏は感謝の言葉を贈り、メンバーと一緒に記念写真の撮影を許可するサービスでもてなした。現時点の外交成果に、金正恩氏も満足しているようだ。

 今後も「ほほ笑み外交」は続くのか。伊藤名誉教授は、こう分析する。

「脱北者の手記によると、北朝鮮では1990年代以降、なし崩し的に一般市民による市場での闇取引が発展してきました。北朝鮮の実態は、日本のメディアが伝えているものより10~15年進んでいます。一方で、金正恩氏がすぐに開放路線に方針転換するとは思えません。なし崩し的に市場経済か拡大していることもあって、いずれ体制の維持に限界が来ると思います。仮に崩壊すればもちろんのこと、体制移行に向かうにしても様々な混乱が予想されます。日本も難民の受け入れや南北統合のための支援が必要になる。日本は、その準備もしておかなければなりません」

 平昌パラリンピックは3月18日まで開催される。歴史を振り返った時、「平昌オリンピック・パラリンピックが転換点だった」となるのか。(AERA dot.編集部・西岡千史)