もっと大きい買い物、たとえば家を建てるときにも役に立ちますよ。もし4000万円の一戸建てだったら、「こんなに高いのだから100万円くらい値引きしてもいいじゃないか」とつい思ってしまいますよね。しかし、自社工場を持っている大手は別として、多くの中小ハウスメーカーでは実際に建築を担当するのは外注の工務店です。粗利益は、仲介手数料の100万~200万円程度なので、値引きは難しいのです。
それでも値引き可能かどうかを見分けるコツとしては、まず社内に設計部門を持っているかどうかを確認することです。担当の設計士さんが、正社員であれば設計料に値引き交渉の余地が多少あります。もし設計を外注しているなら、ハウスメーカーの粗利益は1割ほどなので、値引きは無理ですね。また、大工さんは外注だとしても、現場監督だけでも社内にいれば、すべて業務委託するよりは粗利益率は高くなります。
設計などを内製化して固定費をかけているハウスメーカーであれば、多少値引きをしても受注をとれるほうがメーカー側としても得。場所などの条件によっても違うので一概には言えませんが、値引きしてくれる可能性はあります。
――同じ価格でも、内製化している商品であれば値引きの可能性があり、仲介しているだけなら値引きは無理があるということですね。
この話は、消費だけでなく就職や転職といった場面で会社を選ぶのにも役立ちます。希望する会社は自社で生産、開発などを行っている固定費型で粗利益率が高い高価値戦略をとっているのか、それとも変動費型で、たくさん売れているけれど粗利益率は低くなる低価格シェアアップ戦略をとっているのか。前者であれば、固定費をかけている分、客に徹底的にサービスし、質を上げて付加価値(粗利益)を生まなければなりません。後者は薄利多売ですから、販売重視で、勤めたらかなり忙しいことが予想されます。これは、単純にどちらがいい悪いということではありません。どちらが自分に合っているかという話です。(取材・構成/安楽由紀子)