景気が良くなっていると言われるが、その実感を得られていない人はまだまだ多い。そんな消費者が、少しでも安く、良いものを手に入れたいと考えるのは当然だろう。
“会社経営”を“会社数字”で思考する能力である「計数感覚」が、実は消費者が商品を選ぶ際にも役に立つと明かすのは、計数感覚・養成コンサルタントで、『数字オンチがみるみるなおる! 計数感覚ドリル』(朝日新聞出版)の著者でもある千賀秀信さんだ。
■モノの値段には仕組みがある
――「賢い消費者」は、他の人とどこが違うんでしょうか。
会社経営的な感覚でお店を見ているところではないでしょうか。自分の購入する商品が、なぜその価格になっているのか、価格にはどんな要素が含まれているのか、そのしくみがわかっていると、よりお得なもの、より目的にあったいいものを選べるようになるんです。
――具体的にどのように考えればいいのでしょう。
たとえば、会社の「固定費」と「変動費」の違いを知っていると、見えるものがかなり違ってきます。
靴の修理店を例にしましょう。どちらも修理代が3000円のA店とB店があるとします。A店は自社工房をもつ個人経営店、B店は修理を外注しているチェーン店です。どちらを選びますか?
――価格だけを見れば、どちらを選んでも同じように思えますが。
そうですね。でも、A店は、自社で工房を持っており職人さんがいます。修理を「内製化」しているわけです。ということは、売れたら売れた分だけ発生する「変動費」は、修理に使う材料費だけ。材料費を20%とすると600円。これを控除すると粗利益は2400円くらいにはなるでしょう。職人さんの給与は、販売の増減とは連動しない「固定費」として粗利益から確保します。
B店は、修理をほとんど外注に出しています。そのため外注加工費や配達費など多くの変動費を支払わなければなりません。粗利益は300~600円というところでしょう。たくさん売らないと粗利益を増やせません。ここから、家賃などの固定費を確保しますから、A店より販売を増やさすことが重点になります。