「実はまだ何も決めていないんですよ。とりあえず家を買っただけで、あっちで教室をやろうとは考えていないし。しかも、子供がまだ賛成してないから、もしかしたら3年後に家を売っちゃうかもしれないです(笑)」

 これが武田双雲である。ガチガチに人生を決めない。でも、やりたいと思ったら、やる。もし駄目になっても、それは失敗ではなく、それも一つの答えであり、正解。人生に優劣はない。これこそ武田双雲の真髄なのだ。そして、彼の綺麗な瞳を見ればわかる。毎日を味わいながら楽しんで生きていていると。

 去る2017年12月25、26日の二日間、島根県雲南市において、クリスマス合宿が行われた。武田双雲さんを囲んで、武田双雲さん主催のコミュニティーサイト「双雲塾」の塾生と、一般の方を集めて、とにかく武田双雲さんと、とことん話し合う会だ。文字通り「合宿」のため、武田さんと二日間共に過ごす。よくあるファンイベントは、ファンと本人の宿は全く別だったりするが、武田さんは参加者と同じ宿に泊まる。なかなか有名人が出来る事ではないが、武田双雲という人間は分け隔てなく誰とでも接するのだ。男女含めて70人余りが参加したが、受付やイスの準備、片付けも一緒にやる。大きなスタッフさんがいるなと思ったら、185センチもある武田さん本人だから驚きだ。主催者というより、参加者として皆でその場を楽しむ。そういう空気にしてくれるのが、武田さんだ。合宿では武田さんが、何でも話してくれていた。家族の事から仕事、お金のことまで。そして終盤に差し掛かると、ある参加者から質問があがった。

「歌手を目指し、神戸でボーカルユニットとしてプロデビューしたんですが、うまくいかず解散して、今はスーパーでアルバイトしながら社員を目指しているんです。でも、どこかで昔は歌手だったんだぞという自分がいて、他のメンバーが活躍しているのを見ると、やっぱり悔しいんです。この気持ちを何処にぶつければいいのかがわからなくて、心にビシッとくる言葉が欲しいんです」

 夢を諦めた若者が第二の人生を送り始めるが、華やかな舞台に居た時の自分との葛藤に苦しんでいる日々。重々しい雰囲気が教室に流れる。しかし、参加者さんと向かい合う武田さんの表情は、至って笑顔だ。そして、型破りなセリフが飛ぶ。

「他人との競争、比較をやめることですよ。他人と比較しているといつまでも夢は叶わないし、幸せになれないもんです。競争をやめたら、夢が叶いますよ。あと、自分の今いるポジションに囚われないことです。人間は、上も下もないから」

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