不調の大きな要因は、冬に入ってからのジャンプ練習が十分でなかったことがある。フィンランド合宿では当地の気温が下がらず、11月中旬になってからやっと飛べるような状況だった。結局、そこでしっかり冬のジャンプ台の氷を張ったレーンでの滑りを確認できなかった上、リレハンメル入りしてから予選前に練習できたのは1日だけで、ジャンプ台の感覚をつかみ切れなかったのだ。そのため高梨の持ち味である、踏み切りから瞬時に空中姿勢を完成させる鋭い動きは少し影を潜めていた。
これまでの状況なら、多少の準備の遅れはあっても高梨が技術の高さで勝っていた。だが、今季はパワーもあって高梨より速い助走速度を出しているマーレン・ルンビー(ノルウェー)とカタリナ・アルトハウス(ドイツ)が冬へ向けて万全に準備し、踏み切り技術の精度を上げてきていたのだ。そのふたりが開幕戦から第4戦までは優勝と2位を2回ずつ分け合い、同点でW杯ランキング1位に立っている。
W杯通算勝利数は男子のグレゴリア・シュリーレンツァウアー(オーストリア)と並ぶ53勝で足踏みしている状態だが、1月6日、7日のルーマニアの大会が中止になっている中で、高梨はジャンプ練習をしっかり積めている状況だ。次に迎えるのは札幌・宮の森ジャンプ台の2戦と、山形県・蔵王の団体戦を含む3戦。飛び慣れている日本での連戦で、万全の準備をした高梨がそろそろ力を発揮し始めるはずだ。(文・折山淑美)