前述の清子さんの夫には、ASDの可能性があると思われたので、そのことをお二人に伝えました。その上で、
「調べたいなら、ちゃんとした病院で調べてもらうことはできます」
「ただし、ASDだとわかったからといって、現状の何かが変わるわけではありません」
「病気ではないので、薬(や心理療法)で治療できるわけでもありません」
「二人が一緒にやっていくための工夫をすることはできます」
とお伝えしました。
お二人は、診断よりも改善ということで、結局病院には行かれなかったようですが、その代わりに、お二人が取り組んだことはたくさんあります。
たとえば、夫も妻も本当に「突然」怒り出すわけではなくて、不機嫌なときやストレスの高い時に、突発的に何か追加のストレスが生じると怒りが生じやすいことが分かったので、それぞれの「不機嫌指数」を冷蔵庫に張り出すようにしました。これは通常は暗黙に行われるコミュニケーションを「見える化」するということです。これで、相手の不機嫌指数が高い時は、近づかないでおくとか、逆に
「今、何がうまくいってないの」
と聞いて、理解しておくということが可能になるのです。
ところが、同じような状況のご相談でも全く違うメカニズムも考えられるのです。
香織さん(仮名)夫婦も形としては同じようなご相談でした。香織さんによれば、夫は香織さんがどんなに忙しくしていても、決して手を貸してくれることがなく、それは香織さんに対して全く愛情がないからだと訴えます。
最近大喧嘩になったエピソードを話してくれました。
もうじき生後半年になる娘の育休中なのですが、その日は体調が悪くヘロヘロになりながら面倒を見ていたところ、7時すぎに夫が帰ってきました。「ああ、助かった~」と思って
「香蓮(娘、仮名)を風呂に入れてくれる?」
といったところ、夫は突然キレてしまったということです。
夫に話を聞くと、
「確かに妻も1日大変だったのかもしれないですけど、俺だって、早く帰るためにすごく頑張って帰ってきたのに、『お帰りなさい』もなくいきなり、上から目線でいうのはいかがなものか、っていうことですよ。親しき中にも礼儀あり、っていうじゃないですか」
と言います。妻が続けます。