うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格。ベストセラー『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』の著者・杉山奈津子さんが、今や3歳児母。日々子育てに奮闘する中で見えてきた“なっちゃん流教育論”をお届けします。
【写真】乳児を連れて議場に入った緒方市議(右)と話し合う議長ら
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11月22日、熊本市の定例市議会で、緒方夕佳議員が「生後7カ月の子どもと一緒に議会に出席したい」と赤ちゃんを連れてきたことにより、開会が40分遅れてしまったとニュースになりました。最終的に子どもは友人に預ける形になりましたが、その後、彼女は「子どもと一緒に議会に参加して発言できる仕組みを整えたかった」「子育て中の女性が活躍できるような市議会になってほしい」と発言しています。
この騒動でまず頭に浮かんでくるのは、1988年に起きた「アグネス論争」でしょう。ご存じない方に簡単に内容を説明すると、職場に赤ちゃんを連れてきたタレントのアグネス・チャンさんに対して、作家の林真理子さんが「いい加減にしてよアグネス」というタイトルで「仕事場に赤ちゃんを連れてくるのはプロ意識に欠ける。鈍感だ」とうんざり感たっぷりの文章を「文藝春秋」誌に寄稿し、批判したというものです。これがマスメディアに大きく取り上げられ、「働くお母さん」への大きな問題提起となったそうです。約30年も昔の話なのに、ほとんど同じ問題が現在も大騒ぎされるのは残念ですが。
緒方議員は、以前から何度も議長に「赤ちゃんがいても議員として働けるように体制を整えてほしい」と訴えていたのですが、そのたびに「難しい」と突っぱねられていたとのこと。そこで最終手段として赤ちゃんを同行させたのでしょう。当時のアグネスさんは、「赤ちゃんをつれていくと職場が明るくなる」などと言っていたようで、ふたりの違いは、緒方議員には意図して「仕事と赤ちゃん」問題を大きくしようという思惑がみられる点だと思います。計算通りでしょうか、ネットやテレビでこの騒動は取りあげられ、賛否両論、様々な意見を目にしました。
オーストラリアでは、長年の働きかけによって、2016年に「手短に世話をすること」といって赤ちゃんと一緒に議場に入れるよう規則が改正されたそうです。カナダでも、過去に「夫による世話が難しい」という理由で赤ちゃんと出席した議員が、論争を巻き起こしました。でも日本だって、京都府議会やほか数県の議会には託児所があったり、福岡市議会には赤ちゃんがいても傍聴できる防音の傍聴席があったりするようで、決して遅れているわけではないのです。各々の市の意識の高さによるように思えます。