次は、稲毛海岸駅から千葉みなと駅間なのだが、今度は稲毛海岸発車直後に、ホーム上の客との接触事故が発生。車掌はすぐさま非常ブレーキをかけ、列車を停止させる。そして、指令や駅員とやり取りする場面があった。その後、救護活動が終わり、運転が再開。千葉みなと駅に停車し、デモが終了した。

 JR東日本テクノロジーの担当は、「これによって運転士と車掌の連携を密に取った訓練ができるようになった。乗務員の練度が上がり、事故などが起きてもより早い復旧ができるようになるのでは」と手応えを見せる。運転士と車掌はそれぞれ縦割りの組織となっており、同じ列車で乗務していても、お互いの顔も知らないということも珍しくないという。このシミュレーターの登場で、組織全体の改善に繋がる可能性もある。

 一方、音楽館代表取締役を務め、元カシオペアの鉄道音楽家としても知られる向谷実さんはこう話す。

「20年以上シミュレーターを開発してきましたが、今日目の前で乗務員が実演しているのを見て、感動ひとしおという感じです。既に一部の路線では導入されているのですが、先ほど現役の運転士の方から『早くうちの線区でも欲しい』と言われてしまいました。今後はJR東日本の80以上の全線区で導入を進めていきます。既に現場ならではの有用な使われ方をしているようなので、上手く活用していただけたら嬉しいですね」

 向谷さんのもとには、他の鉄道会社からのオファーもきているという。今後、運転士と車掌が連携するシミュレーターが当たり前になれば、事故が起きても早期の復旧が期待できるようになるかもしれない。(ライター・河嶌太郎)