尖閣諸島と竹島をめぐり日本を取り巻く国際情勢が揺れ動いている。早稲田大学国際教養学部の池田清彦教授は、過激になりやすいナショナリズムにより尖閣諸島と竹島の本質が見失われてしまっているという。

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 己の政治的延命しか考えなくなった無能な政治家は、ナショナリズムを煽ることで一時の人気取りに走るのを常とするが(もちろん、韓国の李大統領や東京都の石原知事のことだ)、一歩間違えれば軍事衝突になりかねない挑発行為は何の利益も生み出さない。

 尖閣諸島も竹島も、歴史を少し調べれば日本の領土であることは間違いないと思うが、韓国に実効支配されている竹島を奪い返すとなると武力衝突は避けられず、たとえ奪い返したとしても、コストを上回るメリットはないだろう。

 竹島は二つの岩山で島自体の利用価値はなく、周辺に地下資源もない。周辺海域は漁場としての利用価値はあると思うので、日本の領土であるとの主張とは別に、安全に漁業ができるように韓国と交渉する他はない。韓国としてもさして利用価値のない竹島を武力支配するために相当な資金を注ぎ込んでいるはずで、余り賢いやり方とも思えない。ましてや今回の李大統領のような日本の大方の国民の神経を逆撫でするような行動は、韓国にとってマイナスにしかならないと思うが、何を考えているのやら。

 一方の尖閣諸島は1970年に1000億バレルの石油が埋蔵されているという調査結果が出て、中国と台湾がにわかに領有権を主張しはじめた場所だ。最近の調査では埋蔵量は33億バレルくらいで大したことはなさそうだ(ちなみに日本の年間石油消費量は16億バレル、世界では320億バレル)。こちらは名実ともに日本が支配しているわけだから、中国や台湾を挑発しないで粛々と事に当たればよいと思う。それにしても、人はなんでナショナリズムに熱狂するのかね。

※週刊朝日 2012年9月21日号