政府が推し進める「働き方改革」。電通の違法残業事件を受け、長時間労働是正を掲げている安倍政権ではあるが、その実現性には各所から疑問の声が上っている。日本人の働き方を本当の意味で前向きに変えるために必要なことは何なのか。
各社の代表、担当者に“改革”の狙いについて伺うとともに、日本人の働き方について聞く、シリーズ「我が社の働き方改革」。最終回となる今回は、東京急行電鉄株式会社(東急電鉄)経営企画室 企画部 イノベーション推進課の永塚慎一氏と野崎大裕氏の二人。東急電鉄初の社内ベンチャーとして、首都圏を中心に全国へ会員制のサテライトオフィスを展開する新サービス「NewWork」の立ち上げを担当している。そんな彼らに、なぜ鉄道会社がオフィス事業を手掛けているのか、そしてそのサービスはこれからの働き方にどのような影響を及ぼしうるのかを伺った。
■いい意味で「がんばらない」という価値観へ
東急電鉄の会員制サテライトシェアオフィス「NewWork」は、同社が2015年4月に創設した社内起業家育成制度の第一号案件だ。長時間労働や過労死の問題などが注目され、これまで日本人が当たり前に行ってきた働き方の在り方を根本から見直そうとする機運が高まっているなか、テレワークを導入する企業を対象に、快適な労働環境を提供する会員制の法人向けサテライトシェアオフィス事業を展開している。
フリーアドレスタイプのデスク席のほか、会議室や秘匿性の高い会話をする際に利用できるTELブース、Wi-FiやコピーとFAXができる複合機などを完備。オフィスの入退室時に必要なライセンスカードで誰が何時間働いたかの勤怠を記録することもできるため、テレワークの課題になりがちな「離れた場所にいる社員をどうマネジメントするか」という問題点も可視化してくれる。
立案のきっかけは、法人向けのオフィス物件営業を担当していた野崎氏が、都内の企業が抱える“ある問題”を解決できないかと考えたとことだった。