右の好打者・広陵の中村奨成 (c)朝日新聞社
右の好打者・広陵の中村奨成 (c)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る

 今月26日にいよいよプロ野球新人選択会議(ドラフト)が開催される。今年は早稲田実業の清宮幸太郎や広陵の中村奨成をはじめ、高校生の逸材が光る。各球団はどのような思惑でドラフト会議に臨むのか、探ってみよう。今回は今季パ・リーグで3位に入り、クライマックスシリーズでファイナルステージへ進出した東北楽天ゴールデンイーグルスだ。

*  *  *

 昨季5位の楽天が前半戦首位を走っていたのは強力な左打線が機能したからだ。

 1番の茂木栄五郎にはじまり、ペゲーロ、島内宏明、岡島豪郎、銀次など左の好打者がことごとく相手の投手陣を捉えた。しかし、後半戦になって急降下した。原因は、彼らの調子が軒並み落ち込んだことと、左打線偏重だったことだ。出てくる選手が左打者ばかりのため、左投手に苦労した。右打者は外国人やFA補強を除くと、2年目として期待がかかるオコエ瑠偉しか見当たらなかったのだ。

 そのせいで、西武の菊池雄星と対するときにもろさを露呈していて、梨田昌孝監督は右打者を並べたが8戦全敗。戦力となる右打者が不足しており、両外国人やFAに頼ってきたツケが回ってきている。和製大砲の内田靖人、遊撃手の三好匠、吉持亮汰らがファームにいるが、彼らの伸び悩みを考慮すると、今回のドラフトでは右打者を中心にした指名に走るのが賢明だろう。昨年のドラフトでは投手8人を指名したが(野手はふたり)、その逆でも不思議ではない。

 とはいえ、ドラフト1位候補に右打者の適任はそう多くない。挙げるとしたら中村奨成(広陵)だ。

 中村は周知のように、今年夏の甲子園で一大会記録の6本塁打をマークしただけでなく、打撃部門の一大会記録をことごとく塗り替えた。強肩強打の捕手としても知られるが、彼の適正は捕手だけではない。肩と足のツールの高さを考えれば、遊撃手や三塁手をこなせる球界トップレベルの内野手に育成できるだろう。

 楽天のスカウト陣がどこまで中村育成の青写真を描いているかは分からないが、中村を内野手で考えているのなら1位指名すべき選手として挙げたい。中村なら2年目以降のデビューを期待できる。

 しかし、捕手として考えているなら話は別だ。楽天はこの2年のドラフトで、強肩強打の捕手を指名しているからだ。そのふたりを差し置いて1位で中村を指名する必要はないだろう。中村を内野手として見ているのなら、という条件付きで1番手に取るべき選手だ。

 ちなみに、今年のドラフトの目玉で左の強打者である、清宮幸太郎(早稲田実)、安田尚憲(履正社)は回避すべきだ。打線のアンバランスさを助長するだけだからだ。

次のページ