もう一つの点について枝野氏は、「政治家にとって、理念や政策は何事にも変えがたい、譲ってはならない筋」と述べていたことだ。一見当たり前のことのようだが、政治家の言葉が軽々しく扱われ、選挙での勝利だけが目的化しているような状況を度々目にしてきた中で、この言葉は心に響くものがあった。
枝野氏が大切にしているという「変わらぬ初心」という言葉からは、政治家とはいかなるものであるべきかを考えさせられた。
これらの言葉を聞いていると、枝野氏が考える政党や政治家のあり方は、小池氏が率いる希望の党とは、対照的と言ってもいいほどにかけ離れていると、改めて思わざるを得ない。
立憲民主党がボトムアップ型ならば、希望の党はトップダウン型の政党だ。
小池氏は新党結成の記者会見で「リセットして私自身が立ち上げる」と述べ、代表就任を表明した。結成に至るまでの過程では、若狭勝、細野豪志両氏などと議論を重ねていたようだが、それが「リセット」されたということなのだろう。
代表就任も唐突に、鶴の一声で決められたようだった。
また1日に報道された希望の党の規約案によれば、同党は「ガバナンス長」を置くことで「党内統制」を行うという。都民ファーストの会所属の都議会議員に対して、個別に取材に応じることは避けるようにとの指示が出されていたように、上からのリーダーシップで引き締めを図る意図があるのだろう。
理念や政策という面で見てみても、希望の党には通すべき「筋」はないようだ。小池氏自身は、外交安全保障や、憲法などについての考え方から、「タカ派」の政治家として知られている。その意味では、日本のこころを大切にする党の中山恭子氏らと組んだのには納得がいく。その一方で政権交代のために、理念や政策に大きな差異があるはずの民進党との合流を図かったり、突如として脱原発について言及したりするなど、必ずしも自身の理念や政策を貫くことは重要視していない。小池氏は権力を手にするためなら、手段は選ばない人物のように思えてならない。