「来年6月までに工事が完了しても、無害化が達成できるわけではなく、安全宣言も出来ない。このことは『市場問題プロジェクトチームPT)』(座長・小島敏郎・東京都顧問)も、8月10日に出した第二次報告書の中で認めています。これでは、市場関係者の理解が得られるはずがない。科学的見地に基づく万全の対策実施や消費者等への説明と理解が必要と表明している農水省が中央卸売市場開設(豊洲新市場開設)を許可しない可能性もあります」
市場関係者の不信感に拍車をかけたのが、豊洲市場で発覚したカビの大量発生だ。豊洲市場に新店舗を構えた業者はこう話す。
「都の発表後、すぐに豊洲市場に見に行きましたが、壁一面にカビが発生している状況でした」。
都の担当者は「真摯に対応したい」と懸念払拭に躍起だが、水谷氏は「地下水の上に建物が立っている豊洲新市場には地下に湿度の供給源がある」と構造的欠陥がカビ大量発生の原因の可能性を指摘。
水谷氏と共に知事に申入れをした畑明朗・日本環境学会元会長(元大阪市立大学大学院教授)も会見でこう強調した。
「カビにベンゼンや水銀などが付着している可能性がある。大阪の地下駐車場でも同じ現象が起き、有害物質が付着した。都は調査すべき。都がやらないのならば、民間が調査する必要がある」
都が環境アセスメントの再実施をしないことに対しても無害化断念と同様、疑問の声が上がっている。
かつて市場問題PTのメンバーだった森山高至氏(建築エコノミスト)は、先のシンポで次のように批判している。
「環境アセスメントの第一人者の原科幸彦・東工大名誉教授に協力を依頼、アセスを実施しないことを検証してもらおうと考えている。無理強いされてもいないのに、小池氏自身が築地市場解体・五輪用駐車場整備に積極的になったのは不可解」
かつて市場問題PTのメンバーとして小池知事に協力してきた森山氏だが、都議選前にPTメンバーを辞め、中央区から立候補し、落選。今では、知事批判の急先鋒になっているのだ。
一気に広がった反発を抑えるべく、小島顧問は市場関係者向け勉強会を開いて基本方針を説明、理解を得ようとしている。
小池知事がどう対応していくのかが注目される。(横田一)