――歴史ブームが続いていますが、現代人がこれだけ戦国時代に惹きつけられる理由はどこにあると思いますか?

 戦国時代は、解釈の余地が一番いい塩梅にある気がするんですよね。源義経の頃なんかは、資料が少なくてよくわからない。逆に江戸時代では、しっかりと事実が残ってしまっている。戦国時代の場合は、一つの物事に関して多くの記録がある。互いに矛盾する記録の隙間を埋めて、「あ、こうなのかも」と新解釈が出てくる瞬間が僕はすごく楽しいです。

 池波正太郎さんは、それが本当にうまいんですよね。どこにも書かれていない部分を推理して、歴史的事実がより魅力的になるような物語をはめていく。時代小説家で誰が一番好きかというと、断トツで池波さんです。

――映画では、あえて織田信長を登場させていません

 今回キャスティングされた人たちが怯えるような俳優が、もういなかったんです。信長は魔王みたいに上にいなきゃいけない人ですから。でも、むしろ登場させない方が、登場人物たちの状況に迫れるんじゃないかと。「信長が……」と噂だけ出てくるのが、伊賀のリアルな世界観だったんじゃないかと思います。主演の大野智くんは、ものすごい能力を持っているのに、そうは見えないという主人公・無門にぴったりでした。妻のお国を演じた石原さとみさんもドンピシャ、当たりのキャスティングでしたね。

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