歌舞伎俳優・市川海老蔵さん(39)の妻でフリーアナウンサーの小林麻央さんが22日に亡くなった。享年34。2016年10月には、自らのブログでステージIV公表し治療を続けてきた。40代から罹患(りかん)率が増加し、日本人女性の12人に1人が乳がんになるなど、誰もがかかる可能性のある身近な病気になっている。『よくわかる!がん最新治療シリーズ 乳がんと診断されました』から、乳がんの統計を見てみる。
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日本の乳がん患者数は年々増加し、現在は毎年7万人以上の人が乳がんと診断されている。30年以上前に比べると5倍に増加し、日本人女性の12人に1人が乳がんになっている。乳がんと診断されると「なぜ自分が……」とショックを受けるかもしれない。しかし乳がんは特別な病気ではなく、誰もがかかる可能性のある身近な病気なのだ。
多くのがんは60歳以降で増加し、高齢になるほど増える。しかし乳がんにかかる人は30代半から増え始め、45歳から49歳でかかる人が最も多い。社会でも家庭でも役割が大きい年代の女性がかかりやすいというのが特徴だ。治療に専念するだけではなく、仕事や子育てをどのように両立させるのかといったことも問題となる。また、それほど多くはないが、妊娠や出産に関わる、より若い年代で発症する人もいる。女性がかかるがんの中で最も多いのが乳がんだが、死亡率でみると大腸がん、肺がん、胃がん、膵がんに次ぐ5番目だ。つまり乳がんはかかる人は多いけれど、それで亡くなる率は高くないがんといえる。
全国がん(成人病)センター協議会加盟施設の生存率調査の5年生存率のデータを見ると、早期のI期で見つかった人の生存率はほぼ100%。II期でも95%以上だ。通常のがんは、治療から2、3年で再発することが多いため、5年生存率はがんが治ったかどうかの目安となる。しかし、乳がんはほかの臓器のがんに比べて増殖のスピードが遅く、治療から5年以上経過して再発することが少なくない。そこで乳がんの場合は10年生率を参考にするのが一般的だ。それでも早期であれば90%を超え、全症例では約80%だ。
一方、ステージIVで見つかった人の5年生存率は35%以下だ。がん研有明病院の岩瀬拓士医師はこう話す。
「治らない人もいるという事実を知ることは必要なことだと思います。それを知ることで、たとえ治らなくてもどうやって充実した人生を送るか、本人も周りも考えられるのだと思います」
大規模な10年生存率のデータは2016年に発表されたばかりなので比較できないが、5年生存率を見ると、乳がんの生存率は20年以上前と比べると上昇している。特に転移がない早期ではなく、見つかった段階でリンパ節転移があった人(領域)や離れた臓器に転移があった人(遠隔)の生存率が伸びている。手術だけではなく、術後薬物療法などが適切に実施されるようになったほか、分子標的薬など新しい薬が登場し、がんの性質に合わせた個別治療が確立されたことなど、治療の進歩によるところが大きい。
5年生存率、10年生存率で生存している人の中には、再発している人もいる。
「現状では再発すると、基本的には治りません。けれども乳がんは再発してもすぐに亡くなるわけではなく、がんと共存しながら生活をしている人もたくさんいるのです」(岩瀬医師)
(文・中寺暁子)