8月10日、韓国の李明博(イミョンバク)大統領が島根県の竹島に上陸した。一方、8月15日に香港の活動家らが尖閣諸島の魚釣島へ上陸し、14人を出入国管理法違反の疑いで逮捕した。こうした「領土」問題にジャーナリストの田原総一朗氏は、国民の外交や安全保障に対する「鈍さ」を指摘した。

*  *  *

 日本政府は竹島問題について、国際司法裁判所(ICJ)に提訴することを決めた。しかしICJで紛争解決手続きを始めるには相手国、この場合は韓国の同意が必要だ。韓国が日本の提訴に同意するわけがないので、このようなことは形式的なパフォーマンスに過ぎない。

 ではどうすべきか。玄葉光一郎外相は、韓国による竹島の実効支配を「不法占拠」だと強調している。ということは、竹島は日本の領土だという意味だが、それならば野田佳彦首相は「竹島は自衛権の範疇(はんちゅう)だ」とはっきり言うべきではないか。自衛権の範疇ということは、場合によっては自衛隊を出動させるということだ。

 どうも日本国民の多くは、実は竹島をあきらめているのではないかと思えるフシがある。毎週金曜日に官邸前で行われる反原発デモは何万人もの人たちが参加しているが、韓国大使館にはごく少数しか押しかけていない。せめて何千人レベルのデモでも起きれば、韓国政府も考え直さざるを得なくなると思うが、そういうことは起きそうにない。

※週刊朝日 2012年9月7日号