官邸としては、安倍総理が受動喫煙対策を骨抜きにしたという形はとりたくない。さりとて、自民党の利権族議員と闘う勇気もない。そこで、最強硬派である塩崎氏に妥協させる。総理は、その責任を回避し、妥協した説明は全て塩崎氏に押し付けて終わりというシナリオだ。
最悪、塩崎氏が内閣改造前までに、妥協する姿勢を見せなかった場合は、次善の策として、塩崎氏を更迭して、新大臣に妥協の責任を負わせるということにするのだろう。
■最後の頼みは小池旋風だが……
自民党内では完全に孤立した塩崎氏だが、実は、神風が吹く可能性がある。
都議選で、自民党東京都連は受動喫煙対策を公約として掲げた。これは、小池百合子東京都知事が、受動喫煙対策をまとめられない自民党を批判して、小池氏が代表を務める地域政党「都民ファーストの会」の公約に受動喫煙対策条例を作ることを加えたことへの対策である。自民党都連も飲食店との関係が深いが、選挙公約で小池氏に負けるわけにはいかないということで、急きょ公約に入れることになったものだ。
東京都での禁煙ムードの高まりは、国政に反映する可能性がある。特に都議選後、小池氏が国政政党を立ち上げるのかどうかが注目されているが、安倍政権が塩崎氏を更迭して、秋の臨時国会で、ゆるゆるの自民党案を出してきたとき、これを小池氏に強く批判されると、世論の関心を引くので、非常にやりにくくなる。
ただし、塩崎氏と小池氏の関係は、第1次安倍内閣の時にはかなり微妙だった。安倍政権との対立は最終段階ではともかく、当面は望まない小池氏が塩崎氏に「塩」を送るのかどうか。都議選での小池氏の戦いぶりと秋の臨時国会までの間に予想される内閣改造での塩崎氏の処遇は要注目だ。
筆者としては、塩崎氏が、最後まで信念を貫いて、仮に更迭されても、政府の外で国民世論をバックにしたキャンペーンを展開し、本来あるべき受動喫煙対策実現のために尽力することを強く期待したいのだが。
安倍一強の中で、そこまでの勇気を求めるのは酷というものだろうか。(文/古賀茂明)