これが驚いたことに、「飲食店が困る」「たばこ農家のことを考えろ」の一点張り。飲食店やたばこ農家の儲けのために妊婦やがん患者、アルバイト学生など弱い者を犠牲にしても全くお構いなしという姿勢だ。あげ句の果てには、自民党の厚生労働部会で、がん患者は「働かなくていいんだよ!」という大西英男衆議院議員の暴言まで出る始末だ。そこまでいかなくても「たばこを吸う人にも人権がある」などと発言する議員も多いという。
■先進国になれない「利権至上主義国家」の日本
ご承知の通り、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、国際オリンピック委員会(IOC)も世界保健機関(WHO)も「たばこのない五輪」を求めている。
こうした要請に真っ向から反するのが自民党案である。WHOによる受動喫煙対策の評価では、現行の日本の対策は 4段階で一番下のグループである。仮に厚労省案が通ったとしても、1段階アップで下から2番目のグループにしかならない。
しかも、今年4月に訪日したWHO幹部は、喫煙室を設けて分煙したつもりでも煙が漏れ出るのを完全には防げないという科学的データを示して、「完全禁煙」を強く要請したそうだ。いい加減な対策でお茶を濁そうとする日本政府に強烈な警告を発したと見なければならない。
最近のオリンピック開催国(カナダ、英国、ロシア、ブラジル)は飲食店を含めて「屋内禁煙」を法律や条例で定めた。これまでに屋内禁煙を法制化した国は40カ国以上だ。日本は、オリンピックを開催するのに屋内禁煙を実施できないということになったら、世界に恥をさらすようなものだ。
それほどわかりきったことでも、「やめられない、止まらない」自民党政治。まさに「利権至上主義」といってよいだろう。
これほど簡単なことを実行できない最大の理由が、安倍総理の利権体質だ。加計学園で露呈した利益誘導。安倍一強といわれるが、こと、既得権との戦いにはとにかく弱い。先般の「2017年の骨太方針」で先発薬の後発薬並み価格への引き下げまたは差額分の患者負担案を素案に載せたのに、医薬業界の反対が強いと見るや、あっさりと全文削除した。とにかく利権に弱いのが安倍政権の最大の特色である。