おそらく、今回も、塩崎厚労相に任せておいたつもりが、党内の利権族議員の勢いに怖気づいて、さっさと白旗を掲げたのであろう。
■塩崎厚労相を貶める報道に謀略の匂い
これほど白黒がはっきりしている問題なのだが、結局自民党の反対で、受動喫煙対策法案は国会に提出されないまま閉会を迎えてしまった。
こうした失態に対してマスコミが批判を強めるかと思ったのだが、どうもそういう雰囲気にはなっていない。批判的な報道でも、自民党と塩崎厚労相の調整がうまくいかなかったというニュアンスが強く出ているし、産経新聞や週刊新潮などでは、明らかに塩崎厚労相を悪者にしている。例えば、産経新聞の見出しは、<「受動喫煙対策」調整行き詰まり 折れぬ塩崎氏、法案“迷走”>というものだった。本文でも、自民党は一生懸命やっているのに、塩崎氏が滅茶苦茶にしたという内容のエピソードばかりが並ぶ記事になっていた。
週刊新潮もこれと歩調を合わせる記事を出した。
「党側は対案を出し、なんとか折衷案を模索しようと試みたのですが……」「翻意させるのは骨だとは思っていたけど、今回はさすがに呆れた。菅さん(官房長官)や党の重鎮が何度も水面下で交渉しているのに、聞く耳ゼロ。妥協という言葉を知らない」などと塩崎批判のコメントを並べる。
産経や新潮がこうした記事を並べたことから、官邸が塩崎氏を切ろうとしているのではないかという観測が浮上している。
特に、産経が、「首相は5月23日、衆院本会議場の自席で、茂木、田村、渡嘉敷の3氏を前に、首相の隣の塩崎氏の机をさすりながら『問題はこの人だね。任せるから今国会での成立をよろしく』と励ました」と書いたのは、暗に、安倍総理は塩崎厚労相を支持していないというサインを出したということだ。
さらに、産経は「まず人事で関係者を変えて協議し直すしか手立てがないかもしれない」という閣僚経験者の声で記事を締めくくり、新潮も「そろそろご勇退いただいて、新しい大臣の下で進めればいいという声が広がっています」という自民党幹部の声で記事を終えている。これは、官邸が、塩崎大臣に対して、妥協しなければ更迭するぞという脅しをマスコミを通じて流していると理解することができる。