京都といえば神社仏閣。絢爛豪華な楼門、歴史ある五重塔や拝殿など、見どころはたくさんある。でも、あと少し、人とはちょっと違う「通」な見方はないだろうか。生粋の京都人であり、歯科医師、かつ作家で、『できる人の「京都」術』の著者でもある柏井壽氏に、「ひと味違う神社仏閣の見方」についてきいてみた。
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お寺や神社に参拝するときに見かけるのが、鳥居横に鎮座している阿吽像(あうんぞう)。たいていが「狛犬」(こまいぬ)です。
「阿吽像」の<阿(あ)>とは、口を開いて、最初に出す音です。一方の<吽(うん)>は、口を閉じて最後に発する音とされ、これは仏教真言のひとつとされています。
山寺では、狛犬ではなく仁王さまが阿吽の呼吸を見せることもあります。が、どちらにしろ、「阿吽」が一対をなしているのは同じです。
ところが「清水寺」の山門横に鎮座する狛犬はちょっと違います。左右の狛犬の両方ともが口を開けているのです。つまりは「阿吽」像ではなく、「阿阿」像ということになっているのです。
これにはちょっとした理由があって、長い清水坂を昇って参詣する人々を、呵々大笑させて迎えようという思いが、狛犬にこめられていると伝わっています(真偽は定かではありませんが……)。
そしてこの阿吽像、たいていが「狛犬」だと冒頭で言いましたが、神社仏閣によっては、いろんな種類がいるのをご存じでしょうか。
例えば、かわいらしいところでいうと、愛嬌のあるネズミを阿吽像に仕立てた神社があります。それが、哲学の道にほど近く、大国主命を祭神とする「大豊神社」(おおとよじんじゃ)の末社「大国社」(だいこくしゃ)です。ここには「狛ネズミ」がいるのです。
また、大豊神社の他の末社には猿や鳶も鎮座しています。
京都旅に出かけたら、阿吽像の動物探しをお目当てにしてみるのはいかがでしょうか。