「地元のスーパーマーケットとして、大手がやらないことも担っていかなければいけない」
本州と四国を結ぶ淡路島でスーパー8店舗を運営する「マイ・マート」(本社・兵庫県洲本市)の橋本琢万社長は、ずっとそう考えてきた。その中の一つが、2017年3月中旬から島内を走らせている移動スーパー「とくし丸」の事業だ。
「とくし丸」は、12年、日常の買い物が困難な「買い物弱者(買い物難民)」を支援しようと、同名の企業「とくし丸」(本社・徳島市)が始めた。地元の商店がなくなったり、交通手段がなかったりしてなかなかお店まで行けない人たちに、移動販売車での買い物を楽しんでもらう一方、定期的に訪問することで地域の「見守り隊」としての役目も果たすのが狙いだ。
具体的には、「販売パートナー」と呼ばれる個人事業主が、冷蔵庫を備えた専用の軽トラックに商品を載せて、地域の顧客を回って販売する。商品は、同社の「エリア本部」として提携する地元スーパーから仕入れる。商品の価格は、スーパーの店頭価格プラス10円。このビジネスモデルは全国に広がり、17年4月27日現在、東京や大阪などを含む36都府県で208台が活動している。
マイ・マートはとくし丸のエリア本部にあたるが、まずは自社で販売パートナーにも取り組もうと、専用車1台を導入。事前の調査で希望があった約200世帯を3つのエリアに分けて、それぞれ週2回、訪問している。事業を始めて1カ月が過ぎたが、既に採算ベースに乗っているという。顧客からお礼を言われることも多く、橋本社長は「やって良かった」と感じている。
淡路島内の淡路、洲本、南あわじの3市の高齢化率は、15年時点でいずれも30%台と、全国平均(26.6%)を大きく上回っている。足腰が弱ってきたお年寄りにとって、玄関先まで来てくれるとくし丸は、ありがたい存在なのだ。とはいえ、なぜ、マイ・マートが淡路島でとくし丸を始めたのか。