しかし、前述した視点で見ると、両者には大きな違いがある。それは、都営地下鉄には、国からの天下り職員はいないということだ。当然、官邸とのパイプもないし、そもそも官邸の意向を忖度する必要はない。
忖度するとすれば、小池百合子東京都知事の意向である。しかし、後述の通り、その小池知事はミサイルなど関係ないという態度なので、都職員が運営する都営地下鉄では、電車を止めるという発想が出てこなかったのではないだろうか。
もちろん、人の命がかかっているのだから、安全サイドで動こうという姿勢自体を批判する必要はない。いろいろな試行錯誤を繰り返しながらよりよいシステム作りに役立てるという考え方に立つのが正しい方向だろう。
その意味で今回、大きな反省点が浮かび上がってきた。それは、安倍政権が、危機を煽る割には、いざというときの対応について、民間にほとんど丸投げという非常に無責任な態度を取っているということだ。
今回の対応について、お隣の韓国内では、一部で「過剰反応」だという批判がなされたことも報じられている。彼らは、常在戦場という気持ちで、日ごろから様々な訓練なども行っている。ミサイル発射への危機感も強い。
彼らから見ると、日本は普段からちゃんとした訓練をせず、この程度のことであたふたして、一部の企業がアリバイ作りの対応をして混乱を引き起したというように映るのだろう。
これに対して、日本のネトウヨなどからは、韓国こそ「平和ボケ」だという批判がネット上で飛び交っている。「金正恩は頭がおかしいから、本当にいきなりミサイルを撃ち込んでくるかもしれないぞ!」ということなのだ。
●金正恩氏を喜ばせる安倍政権のミサイル対策
しかし、今回の事件で、日韓が批判合戦をするというのは、それこそ愚の骨頂である。これを見て喜ぶのは誰か。
それは北朝鮮だ。失敗したミサイル発射で、日本がこれだけオタオタしてくれる。本当に簡単で効果的な脅しになっていることが証明されたということになる。それに加えて、日韓両国民の間で、対応の温度差が出て溝ができるなどということになれば、予想以上の効果と言ってよいだろう。