一方、JR西日本は、本社への中央官庁からの天下りは少なく、ホームページを見る限り、常勤監査役に元内閣広報官の千代幹也氏がいるだけだ。しかし、この千代氏というのが、霞が関や永田町では知らない人はいないという、官僚中の官僚であることは、一般の人にはあまり知られていない。同氏の最終肩書は、内閣広報官だが、その前職が「内閣総務官」というポストだ。このポストは、内閣の一般職公務員の中でも、トップと言ってよいポストである。特にあの「内閣官房機密費(報償費)」の会計処理を担当するという意味で、最高機密を握る人物なのだ。そのポストに4年もいたのだから、官邸とのパイプは太い。その在任期間は2006年夏から2010年夏の4年間。まさに第一次安倍内閣の機密費の使い方をその誕生時から知っている人物だ。
東京メトロの安富会長とJR西日本の千代監査役は両者とも旧運輸省のキャリア官僚。こうした旧運輸省系のトップエリートが天下りしている企業だからこそ、今回大胆な独自路線を取ることになったのではないだろうか。よほどの自信がない限り、普通の日本企業にはこんな芸当はできないはずだ。運輸官僚としてトップの地位まで上り詰めたエリート同士の二人の間に何らかの意思疎通があったのかもしれないとも思う。
いずれにしても、両社とも、何らかのルートで、官邸の意向を受けていたのではないか。あるいは、安倍総理が北朝鮮ミサイルの「危機」を思い切り演出しているのを見て、それを「忖度」したのだろうか。自分たちも協力しよう、そうすれば、覚えがめでたくなるかもしれない―――と。
●東京メトロと都営地下鉄の対応の違いの原因は?
東京メトロが電車を止めたのに都営地下鉄はそうしなかった。これも都民から見ると不可解だ。前述した通り、東京メトロの第二位の大株主は東京都で、半数近い株を持っている。一方、都営地下鉄は東京都交通局の直営企業で、事業内容は全く同じ地下鉄営業だ。東京都の兄弟会社という見方もできる。なのに、ミサイル対応は全く異なった。