「子どもたちが教育勅語の意味を理解して朗唱していたとは考えづらい。九九を暗記するような感じで唱えていたのではないでしょうか。とはいえ、森友学園は教育勅語だけでなく、子どもを自衛隊の船に乗せたり、『安倍首相頑張れ』と唱和させたりと、偏向的な教育を繰り返し行っていましたから、結果的に影響されることはあり得ます。


このような教育の問題点は、子どもに特定の思想を押し付けるだけでなく、物事を押し付けられるのに何の疑問も抱かず、ロボットのように受け入れる人間を育ててしまう危険があることです」

 しかし、森友学園の一件は氷山の一角に過ぎないのかもしれない。3月31日に告示された次期学習指導要領では、小中学校の社会科で「聖徳太子」「鎖国」といった言葉を使い続けることになった。2月に公表されていた改訂案では中学校で「厩戸王(聖徳太子)」「江戸幕府の対外政策」といった言い換えが行われる予定だったが、1ヵ月のパブリックコメント募集を経て方針が変更された。保守系の「新しい歴史教科書をつくる会」は、パブコメ募集期間中、「聖徳太子」の名前を守るため大々的に運動を展開していたという。

「『厩戸王(うまやどのおう)』との併記が聖徳太子に戻され、中学校の保健体育の『武道』の一つとして、銃剣道が明記されました。銃剣道は、戦時下において軍事教練として採用されていたものです。これもパブコメでの要望が多かったとのことですが、どのくらい要望があったのか、意見の数の詳細は公表されていません。また、幼稚園では国歌に親しむことが推奨されようとしています。こういった変化が大多数の国民の合意を得ない状況で進んでいる。これは異様としか言いようがありません。政府が教育勅語を容認する発言をしているのも、こうした流れに呼応するものなのではという疑念が湧きます。誰がどのような思想を持つかは個人の自由ですが、特定の思想が教育を歪めることは決して許されないことです」

 稲田朋美防衛相は国会で「教育勅語の精神は取り戻すべきだと考えている」と述べ、松野博一文部科学相は「道徳を教えるために教育勅語のこの部分を使ってはいけないと私が申し上げるべきではない」と堂々と語った。こうした政権の手のひらの上で、日本の教育はどこへ向かっていくのだろう。(取材・文/dot.編集部)