ロンドン五輪のお祭りムードから一転、お盆の日本列島は、やっかいな隣人たちの振る舞いに悩まされることとなった。領土をめぐる中韓の挑発に、韓国大統領による天皇陛下への侮辱的発言――それでも、これが日本の置かれた現実。やりたい放題の隣国の動きに、辛口で知られる元外交官の佐藤優氏は「帝国主義の復権」を見る。

「冷戦が終わり、世界は再び帝国主義化している。相手国の立場など考えず、自分の国の利益だけを最大化しようする考え方。こうした国を止めるには、国際社会が"やりすぎだ"と圧力をかけ、渋々従わせるしか方法がない」

 しかし、いまこういう時代に、日本は国際社会を味方につけることができているのだろうか。実は、まさに日本の「終戦の日」に出された米ウォールストリート・ジャーナル(15日付)に、

〈日本でナショナリストの影響力が拡大―領土問題受け〉

 と題された記事が掲載された。要は、日本の"民族派"の政治家や活動家の影響力が強まり、中韓との関係で、野田政権の頭痛のタネになっているという内容だ。世界は日本の"右傾化"を見ているのである。世界の共感を得るためには、日本を正しく知ってもらう必要がある。しかし、日本の外交は、相変わらず不安要素だらけ。

「米国は、米国債の最大の保有国である中国と対立する気はなく、尖閣問題での加勢は期待できない。米国に頼らず広く国際社会に日本の立場をアピールすべきなのだが、一部の外務官僚は今度の問題を受けて今秋のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で日韓首脳会談はしないなどと言っている。こういう場で首相が直接文句を言って、記者会見で『このように伝えました』と、国際社会に強くメッセージを発信しないといけません」(佐藤氏)

※週刊朝日 2012年8月31日号