
カジノを含む統合型リゾート(IR)の整備を促す、IR推進法いわゆる「カジノ法案」が12月15日に成立した。今後は「IR実施法案」を審議し、具体的なルールづくりなどを行うことになる。カジノ法案成立ですぐにカジノがつくられることはないが、それでも専門家の中には警鐘を鳴らす人も多い。
国内の数少ないギャンブル依存症専門外来・大石クリニックの大石雅之院長も、そのひとりだ。ギャンブル依存症を発症するきっかけとして「ギャンブルに触れる機会が多いこと」を挙げ、次のように話す。
「ギャンブルはまず、それ自体を知らなければハマることはない。競馬場が近かったり、パチンコをしている人と触れる機会が多かったり、そういったことが依存症の入り口となります。カジノ法案は、外国人観光客などを誘致するためのものという話もありますが、もしそれがうまくいかなかった場合は、国内の消費者に目を向けるはずです。シンガポールなどの海外でも、自国民が多く通っています。もし日本でもそうなれば、ギャンブルに触れる機会は増え、依存症の“入り口”が増えることになりかねません」
さらに、治療に関して厳しい現実を明かす。
「実はギャンブル依存症は、すべての人を完全に治すことはできないのです。一定数、病院に通い続けても治すことができない人が出てくる。カジノは一時的に国の収入源になるかもしれませんが、その人がギャンブル依存症になった場合、本来その人から入るはずの税収はなくなり、逆に生活保護を与えなければならなくなる可能性もある。その人が治癒しなければ、一生そういった人を国は抱え続けることになるのです。それが長い目で見て、プラスになるとは思えない」
一方、実際に依存症経験者はどう考えているのか。かつてギャンブル依存症だったという30代男性に話を聞いた。