「Pitch18」を紹介する西野製作所の西野社長
「Pitch18」を紹介する西野製作所の西野社長
タッチパネルで球速・球種・コースを選ぶ
タッチパネルで球速・球種・コースを選ぶ
ふくらみを帯びた特殊なローラーが多彩な投球を生む
ふくらみを帯びた特殊なローラーが多彩な投球を生む

 打者・大谷翔平と投手・大谷翔平が勝負したら、どちらが勝つのか? 夢の対決を実現してくれるピッチングマシンがある。その名は「Pitch18」。人工知能を搭載し、あらゆるコースに多彩な球種を緩急自在に投げることができる。往年の名選手の魔球も再現可能だ。頭脳派かつ剛腕の“投手ロボット”に会うべく、製造元である工作機械メーカー・西野製作所(石川県かほく市)を訪ねた。

「百聞は一見に如かず。まずは実物をご覧あれ」と工場に案内してくれたのは西野十治社長。見上げるような長身である。バスケットボールの選手として国体に出場したことも。技術担当の酒井祐一さんを促してタッチパネルを操作し、“投球”を実演してくれた。

「“通常モード”は球速を80キロから160キロまで5キロ刻みで設定しています。直球・カーブ・スライダー・シュート・シンカーの各球種と、それぞれの変化の大小を選んでコースを定め、セットします。“上級モード”は特殊な変化球もオーダーすることが可能。通常モードにはない球を再現できます。“パターンモード”はこれらの球を組み合わせて投球パターンに応じた練習が可能です。どんな球でもほぼ狙ったコースにいきますよ」(酒井さん)

 黄緑色の重量感あふれるマシンから飛び出した球はど真ん中のストライク。シートの中央にズドンという音を立ててぶつかった。微妙に変化して内角低め、続いて外角高め……。変幻自在の投球である。

 現在の設定では最速160キロとなっているが、プログラムを変えれば大谷同様、165キロの球を投げることができる。200キロ近くまで出る性能を備えているとか。球速・球種・コースのデータを選んでセットしておけば80球までの“連投”は可能とのこと。あるプロ野球の投手の球を忠実に再現したり、登録したパターンを投げたりという使い方もできる。

 Pitch18を導入する利点、野球の練習を見たことがない人には、分かりにくいかもしれない。現在、最も普及しているピッチングマシンは、二つのローラーの回転によって球が発射される。したがって、球速・球種・コースを変えるにはローラーの向きや設定を変える必要がある。また、ばねの反発力を利用したアーム式のマシンもあるが、球種に乏しく、オーバースローの球筋しか再現できない。制球力は、いまひとつだ。選手はローラー式のマシンを数台並べ、球種ごとに打席を移動したり、練習を中断してマシンを操作したりしている。しかし、それでは集中力が途切れて、実戦を意識した練習になりにくい。時間のロスも大きいという現状がある。

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